【2月6日 AFP】ラグビーW杯イングランド大会(Rugby World Cup 2015)の決勝を担当した名レフェリーのナイジェル・オーウェンズ(Nigel Owens)氏が、同性愛者としての自身のアイデンティティーに苦しんだ日々について語り、化学的去勢の処置を求めたこともあると明かした。

 同性愛を以前から公表しているオーウェンズ氏は、英BBCのラジオ番組「デザート・アイランド・ディスク(Desert Island Discs)」で、同性愛を自覚してからの葛藤について語り、2015年大会決勝を裁いたときの重圧でさえ、それと比べれば何でもないと話した。さらには自殺願望を抱いていたことを明かし、自分に嘘をつき続けることはできないと考え、2007年の同性愛公表に至ったとしている。

 45歳のオーウェンズ氏は、「W杯決勝では8万5000人の観客が見ている前で、さらに数百万人がテレビで観戦しているなかで試合を裁いた。判定の一つ一つに厳しい目が注がれる中でのレフェリングは、とてつもない重圧だった」と語った。「だけど、自分が何者なのかを受け入れることの難しさに比べれば、その重圧は何でもない」

 それまでは過食症になったり、ステロイドを摂取したりして、体を壊したこともあったというオーウェンズ氏は、主治医に「ゲイになりたくない。化学的去勢は受けられますか?」と尋ねた経験があることも明かした。

 さらにオーウェンズ氏は、鎮痛剤のパラセタモール(paracetamol)をとかしたウイスキーという、命を落とす可能性もある危険なカクテルを飲んで意識をなくしたが、警察に発見されたことで自殺は未遂に終わったしている。「その日、一晩泣き明かした末、成長しなければならないと気づいた」

 その日から5日間の入院生活を強いられたオーウェンズ氏だが、今は亡き母親に事実を告白する勇気を振り絞れるようになるまでには、さらに数年を要したという。告白を聞いた父親も「はじめは複雑そうだった」ようだが、「私の父への愛、そして父の私への愛はまったく変わらなかった」と語った。

 オーウェンズ氏はまた、ウェールズラグビー協会(Welsh Rugby Union)から多大なサポートを受けていることに感謝の意を示し、「セカンドチャンス」をもらったと感じていると語った。(c)AFP