■アームストロング氏も使っていた?

 薬物使用を認めてツール7連覇の記録を剥奪されたアームストロング氏も、弁護士を通じてモーターの使用を否定した。

 ところがバルハス氏によると、彼がはじめてモーターを隠した自転車を匿名の人物へ売ったのは、ちょうどアームストロング氏の連勝が始まったころだという。同氏によれば、相手方の人物から、10年間はモーターを積んだ自転車を作るのも、作った話をするのもダメだと、取引を持ちかけられたのだそうだ。

 バルハス氏は、「何もしなければ200万ドル(約2億3000万円)やると言われて、拒否できる人間がいるだろうか? いるはずがない」と話している。

 一方、アームストロング氏のチームメートだったハミルトン氏は、当時2人が所属していたUSポスタル(US Postal)がモーターを使っていたかはわからないと話している。

 CBSは今回、1999年大会でチームが使用していた自転車を購入し、バルハス氏に部品代と作業代1万2000ドル(約135万円)支払ってモーターを取り付けたうえで、ハミルトン氏に試乗してもらった。その感想は、「これはさりげないね。これならばれずにうまくやるチームもあると思う」というものだった。

 モーターは軍規格の金属で作ったもので、駆動音は静か。リチウム電池で作動し、隠しボタンを押すと計20分間は推進力が一定度増す仕組みになっている。心拍数と連動して遠隔で作動する仕組みも搭載されていて、選手の心拍数があるレベルを超えると、モーターが駆動を始めるという。

 ハミルトン氏は、「これは、間違いなく勝敗を分ける肝になるよ。間違いない」と話している。

 バルハス氏は、モーターを使ったことのあるプロ選手を何人か知っていると話す一方で、それは自分のせいではないと主張し、「大金が絡めば、やらない理由はない」と開き直っている。

 同氏によれば、アスタナ(Astana Pro Team)の薬物使用に関わっていたとして業界から追放された、ミケーレ・フェラーリ(Michele Ferrari)医師がモーターを積んだ自転車をこの3年の間に買っていったという。フェラーリ医師本人は、乗ってみたことはあるが、バルハス氏から買ったことはないと話している。(c)AFP