【1月27日 AFP】ドナルド・トランプ(Donald Trump)米大統領は25日、自身が昨年の選挙戦で公約に掲げていたメキシコ国境での「壁建設」の実現に向けた大統領令に署名した。

 本記事では不法移民、麻薬、犯罪者の締め出しが目標とうたっているこの巨大プロジェクトの実現可能性についてみていく。

■壁建設の費用

 正確な額は不明だが、莫大(ばくだい)な金額となる。

 非営利の人権団体「ワシントン・オフィス・オン・ラテン・アメリカ(Washington Office on Latin America)」が引用した米税関・国境取締局(CBP)の見積もりによると、全長約3200キロにおよぶ米・メキシコ国境の一部、約1050キロの区間にはすでに壁が設置され、人や車両の往来を阻んでいる。しかしあと665キロ分の壁を建設するだけでも114億ドル(約1兆3000億円)もの費用がかかるという。

 トランプ氏自身も費用について言葉を濁し、40億ドル(約4600億円)から約100億ドル(約1兆1400億円)と見積もってきた。しかし建築家や技師によるとそんな額では収まらず、はるかに多くの費用がかかるという。

 エマージングテクノロジーメディア「MITテクノロジーレビュー(MIT Technology Review)」が昨年10月にリリースした「Bad Math Props up Trump's Border Wall(トランプ氏の国境の壁を支えるまずい計算)」と題した記事の見積もりによると、鋼鉄とコンクリートからなる壁を約1600キロにわたって設置するには270億ドル(約3兆900億円)から400億ドル(約4兆5800億円)の費用がかかるという。

 同記事には「米・メキシコ国境に壁を設置することが賢明かどうか、誰が費用を負担するかといった問題はさておき、トランプ氏が主張してきたような金額で壁を設置することは到底不可能」と書かれている。

■壁建設の財源

 ショーン・スパイサー(Sean Spicer)米大統領報道官は26日、トランプ大統領が、対メキシコ国境での壁建設の資金源として、メキシコからの輸入品に20%の関税を課すことを計画していると明らかにした。

 また、トランプ氏の大統領令はジョン・ケリー(John Kelly)国土安全保障省長官に、「フェデラルファンドを確認し、法が許す範囲において全額を南部国境沿いの物理的な壁の計画、設計、建設に割り当てる」よう命じている。「今年度と来年度の予算教書の準備など、壁の建設に必要な長期資金調達について計画立案する」ようにも命じている。

 トランプ氏は壁建設の費用はメキシコに支払わせると繰り返し主張してきたが、メキシコは壁建設の費用や米国立て替え分の支払いをきっぱりと拒否している。