■料理との「戯れ」も醍醐味

 成都にある飲食店で料理長を務めるイン・ディンジュン(Yin Dingjun)さんは、ウサギの頭の調理法は簡単そうにみえるが、熟練した技術が必要だと語り「ウサギを血抜きして、内臓を取り除いてから、頭をスープに数時間、漬け込まなければならない」と話した。

 中国でウサギは月に住む玉兎(ぎょくと)として伝承に登場し、多くの若者が食用動物ではなく愛玩動物と考えている。

 英ロンドン(London)を拠点に活動する中国料理の専門家フクシャ・ダンロップ(Fuchsia Dunlop)さんによると、中国でもウサギの頭にしゃぶりつくことはおかしいと考える人がいるが、四川料理では当たり前のことだという。ダンロップさんはさらに、「アヒルの頭を使ったものなど、香辛料の利いた料理はたくさんある」と話し、四川の人々にとって、食べ物と戯れることも楽しみの一部で「挑む要素」が好きなのだと語った。「指と歯を使ってわずかな肉を食べるのも、楽しみの一部だ」という。

 成都では夜になると、数えきれないほどの屋台でウサギの頭が売られ、地元の人々はビールを飲みながらそれをつまむ。肉をはじめとするウサギ製品を取り扱う卸売り大手「Hage」のロン・リーポン氏は「夜市は四川文化の一部」だと語る。

 リーポン氏は毎年800万匹以上のウサギの頭を販売している。だが巨大な需要を受けて、十分な量を供給をしようと必死に努力している。その結果、販売するウサギの頭の約20%は欧州、主にイタリアとフランスからの輸入品となり、大半が冷凍ものだ。

 仏政府の統計によると、2014年のフランスから中国への輸出は、ウサギの肉と臓器の可食部位を合わせて166トンだった。(c)AFP/Julien GIRAULT