【12月26日 AFP】ドイツでこのほど、世界で初めてクラウドファンディングの助けを得て造られた鉄道が運行を開始した。南西部シュツットガルト(Stuttgart)と首都ベルリン(Berlin)を結ぶもので、安価な運賃などを売りにドイツ鉄道(DB)が牛耳る独鉄道業界に風穴を開けたい考えだ。

 今月14日午前7時、年季の入ったオレンジ色の列車がシュツットガルト(Stuttgart)を出発した。フランクフルト(Frankfurt)、ハノーバー(Hanover)と北上、そこから東へ向かい、ベルリンに到着した。所要時間は約6時間30分だった。

 この鉄道を運営するのは「世界初のクラウドファンディング鉄道」をうたう新興企業ロコモア(Locomore)。創業時の資本金は全額インターネットで調達し、支持者から1年足らずで60万ユーロ(約7400万円)以上を集めて開業にこぎ着けた。車両は1970年代製の中古品を再利用した。

 シュツットガルト─ベルリン間ではDBが1日700本以上運行しているが、ロコモアは当初は1日わずか1往復。創業者のデレク・ラドウィグ(Derek Ladewig)氏も、簡単には太刀打ちできないことは織り込み済みだ。

 それでも、ロコモアには強みがある。その一つが料金の安さだ。来年1月からの運賃は22ユーロ(約2700円)とDBの正規運賃115.90ユーロ(約1万4000円)の5分の1程度に抑えた。これによって同社から顧客を奪い取る狙いだ。

 加えて、環境負荷が相対的に小さい交通手段という鉄道のメリットを生かし、環境意識の高い顧客を引き寄せることももくろむ。

 ラドウィグ氏はAFPの取材に「ドイツ鉄道だけでなく、自動車や飛行機、長距離バスに対抗する新しいサービスを提供していく」と意気込みを語った。

 ロコモアは開業後に切符と交換できる引換券、マグカップやTシャツなどのグッズを販売。多くの人がこうしたものを購入する形で資金を提供した。(c)AFP