【12月23日 AFP】空を飛行して季節移動する昆虫の数を計測する世界初の調査で、毎年3兆匹以上の昆虫が、われわれの頭上を通過していることが分かった。英国の研究チームが研究論文を発表した。

 健全な生態系で重要な役割を担う昆虫は、作物を受粉させ、作物につく害虫を食べ、鳥やコウモリの餌にもなる。

 過去に類をみない今回の計測結果は、われわれの大半が決して目にすることのない昆虫の季節移動が非常に大規模な現象であることを示唆していると、専門家らは述べている。

 論文の共同執筆者で、英エクセター大学(University of Exeter)のペンリン(Penryn)キャンパスにある生態系・環境保全センター(Centre for Ecology and Conservation)のジェイソン・チャプマン(Jason Chapman)氏は「昆虫の体は栄養価が高く、こうした行動の重要性は過小評価されている」と述べ、「英国南部上空で観察された昆虫の密度から、全大陸の上空での密度を推定すれば、高高度の昆虫移動は、陸上生態系で最も重要な動物の年次移動を示しており、最重要の大洋回遊に匹敵する」と指摘した。

 米科学誌サイエンス(Science)に掲載された論文によると、高高度を移動する昆虫の総重量は3200トンで、毎年秋に英国からアフリカに移動する鳴き鳥3000万羽の総重量の7倍以上に及ぶという。

 エクセター大と英ロザムステッド研究所(Rothamsted Research Institute)の研究チームは、移動の大半、約70%は日中に行われるとしている。

 論文の主執筆者のフー・ガオ(Gao Hu)氏は、空に向けた特殊な電波探知機を用いて、高度150メートルを移動する昆虫をほぼ10年にわたって追跡調査した。

 季節移動する昆虫の総数は、年平均で3兆3700億匹に上った。移動する昆虫の数は、暖かい日に最も多かったと研究チームは説明している。(c)AFP