【10月5日 AFP】侵略的外来種の昆虫がもたらす被害は、毎年少なくとも770億ドル(約7兆9000億円)に上ることが、4日に発表された研究論文で明らかになった。論文は、この数字が氷山の一角であり「かなりの過小評価」されていることも指摘している。

 英科学誌ネイチャー・コミュニケーションズ(Nature Communications)に掲載の研究論文は、最近の論文700件以上を調べ、外来種による、商品、サービス、保健、農業生産に与える影響を調査したもので、気候変動によって影響を受ける地域が、2050年までに20%近く拡大するだろうとしている。

 論文の執筆者らは、研究の大半は北米と欧州を対象としており、その他地域での食害や病気の媒介といった大きな損害については十分に考慮されていないとしている。

 最も破壊的のはイエシロアリで、巨大コロニーに住み、木造構造物や生きた木を食い荒らす。米国の幅広い地域にまん延しており、駆逐するのは不可能とされている。

 外来昆虫に起因する保健コストは、世界で60億ドル(約6200億円)を上回る。その大部分は蚊が媒介する熱帯病のデング熱に起因するものだ。

 地球の温暖化により、動植物が南北極、特に北方に押しやられつつあるなか、新たなテリトリーに移動し大惨事をもたらしているのは、世界約250万の昆虫種のうち、たった2200種。そして、他所に移る昆虫種の10%のみが定着し、さらにその10%だけが侵略的な存在となる。

 研究を率いたフランス国立科学研究センター(CNRS)のフランク・コーチャンプ(Franck Courchamp)氏は、解決策を「バイオセキュリティー」と指摘。「これには特定の地域からの船舶・航空貨物の検査、高リスク輸入物資の処理義務付けを確保する法制度、新たな侵入種の迅速な根絶が含まれる」と説明した。コーチャンプ氏は、さらなる農薬の使用や遺伝子操作などの技術には否定的な見方を示している。

 在来種を含むすべての昆虫は、農業に大きな損害をもたらし、世界の収穫30~40%に影響を与える。これは、10億人の食べ物に相当するという。

 国際自然保護連合(IUCN)は、侵略的外来種のデータベースを整備しており、現在では植物と動物、細菌、菌類を含むほぼ900種がリストに含まれている。(c)AFP/Marlowe HOOD