■人間関係に関係する部位に変化

 研究では、初産の母親25人の妊娠前と妊娠後の脳スキャン結果を比較した。さらに、初めて子を持つ父親の脳と、子どもがいない男性と女性の脳もそれぞれ調べた。

 その結果、妊娠中の女性の脳の人間関係に関係する部位に、「長期にわたる顕著な灰白質の容積の縮小」がみられることが分かった。その後、新生児に対する母親の反応を脳スキャンで調べたところ、これと同じ部位が最も明るく輝いた。

 研究チームによると、この脳の変化は、母親になるための適応である可能性が高いという。これにより、新生児が必要としていることや新生児の感情の状態を認識する能力と、新生児の健康と安全への潜在的な脅威を読み取る能力が高まるという。

 大脳皮質と呼ばれる脳のひだの多い外層部分に存在する灰白質は、学習、記憶、運動機能、社会技能、言語、問題解決などをつかさどっている。しかし、今回の研究では「妊娠中に記憶などの認知機能にいかなる変化も観察されなかったため、妊娠中の灰白質の減少は認知障害を意味するものではないと考えられる」という。

 今回の研究は最長で妊娠から2年後までの女性についてしか行われていないため、脳の変化がどれほど長い期間続くのかは明らかになっていない。

 研究チームは、妊娠による灰白質の減少は不要になった神経結合(シナプス)を除去する「シナプスの刈り込み」と呼ばれる現象によるものかもしれないと推測している。

「シナプスの刈り込み」は児童期を経た後、青年期に起きる現象で、より効率的で特殊化したシナプスを形成して神経ネットワーク全体の効率を高めるために行われる。(c)AFP