【8月25日 AFP】自閉症の患者には、脳細胞が送受信する際の経路接続部にあたる「シナプス」が過剰に存在するとの研究論文がこのたび、米脳神経科学誌「ニューロン(Neuron)」に掲載された。この研究結果を足掛かりに、複合疾患である自閉症の治療法開発への道が開けるかもしれない。

 自閉症患者の脳にシナプスが過剰に存在するのは、過剰形成ではなく、劣化した古い細胞を廃棄(刈り込み)する通常のプロセスが正常に機能しなくなった結果だという。

 論文を発表した米コロンビア大学(Columbia University)の研究チームは、自閉症を再現する遺伝子組み換えマウスを用いた実験で、脳の「刈り込みメカニズム」を回復させることに成功した。

 研究チームは実験で、タンパク質「mTOR」の働きを抑える「ラパマイシン」と呼ばれる薬剤を使用した。mTORは自閉症患者で異常に活性化され、脳が本来持っているシナプスの刈り込み(間引き)能力を阻害する。

 論文によると、ラパマイシンを投与したマウスでは、他のマウスとの接触を避けるなどの典型的な自閉症的行動の減少がみられたという。

 論文の主執筆者で、コロンビア大の神経生物学者、デビッド・スルザー(David Sulzer)氏は「われわれは、自閉症が発症した後にマウスを治療することに成功した」と語る。

 このことが非常に重要なのは、自閉症が出生時ではなく、後の成長期に発症するためで、「診断後に有効性を示す治療法が不可欠となるのはその理由からだ」と同氏は説明。AFPの取材に「われわれが正しければ、診断後でもかなり有効な治療を行えるはずだ」と語った。

 最新の政府推計によると、米国では68人に1人の子どもが自閉症スペクトラム障害(ASD)と診断されているという。

 神経学者らによると、新生児の脳は成長に伴い大量のシナプスを形成するが、後の幼児期や青年期では、脳のさまざまな部位が大量の信号に圧倒されずに発達できるよう、これらシナプス接続の多くは間引きされるという。