■「死体は私が提供する」ドゥテルテ大統領

 今年5月に行われたフィリピン大統領選で、ドゥテルテ氏は麻薬中毒者ら10万人の殺害を宣言する前代未聞の「麻薬撲滅戦争」を公約に掲げて圧勝した。

 選挙活動中の街頭演説でも、殺人が急増するから葬儀場を増設したほうがいいと冗談まじりで人々に忠告し「葬儀場はすし詰めになるだろう。私が死体を供給するからね」などとジョークを飛ばして支持者の歓声と笑いを誘った。

 そして大統領となったドゥテルテ氏は、その言葉を実行した。警察の報告によれば、警察は麻薬犯罪容疑者として2000人以上を殺害。このほかにも約3000人が正体不明の武装集団らに射殺されたという。市民の間には急増する超法規的殺人への恐怖が広がる。

 今年9月、ドゥテルテ大統領は麻薬中毒者300万人を「喜んで虐殺する」と発言。麻薬密売を完全に根絶するまで一切、手心は加えないと繰り返し明言していることもあり、今後も死者は確実に増え続けると思われる。

 ドゥテルテ大統領の麻薬撲滅戦争を強く非難する声は国内外にあるものの、フィリピン人の圧倒的多数はドゥテルテ大統領の運動を支持している。