■「人生をめちゃくちゃにされた」元選手たち

 今回の騒動の発端は、クルー・アレクサンドラFC(Crewe Alexandra FC)でプレーしたアンディ・ウッドワード(Andy Woodward)氏が、英紙ガーディアン(The Guardian)に対して、当時クラブのユースチームの監督をしていたベネル元受刑者から数年にわたって虐待されたと告白したことだった。

 ウッドワード氏は「私の人生は43歳になるまでめちゃくちゃだった。だけど、同じ目に遭った子どもがほかに何人いたと思う?私は100人近い人物から、少年時代にさまざまなチームでバリー・ベネルの毒牙にかかったという話を聞いている。彼らは大人になった今も、身の毛もよだつ恐怖の中で暮らしているかもしれないんだ」と話している。

 そしてウッドワード氏の告白に勇気づけられて、トッテナム・ホットスパー(Tottenham Hotspur)などでプレーしたポール・スチュワート(Paul Stewart)氏も、ユース時代に性的虐待の被害に遭っていたことを告白した。

 トッテナムのほかにシティ、リバプール(Liverpool FC)などでプレーし、イングランド代表にも3試合選出されたスチュワート氏は、過去にある男から繰り返し性的ないやがらせを受け、誰かに話したら家族を殺すと脅迫されていたことを明かしている。

 スチュワート氏は、英紙デイリー・ミラー(Daily Mirror)に「その精神的な傷から、酒やドラッグにおぼれるようになった。いま思えば、あれはこちらを手なずけるための手口だったんだろう。あいつの行為は次第にエスカレートしていった」と話し、ほかに複数の選手が被害に遭っていたとも明かしていたが、自身を虐待していた人物の名前は明かしていない。

 ほかには、クルー・アレクサンドラで将来を嘱望される選手だったスティーブ・ウォルターズ(Steve Walters)氏も、同様にベネル元受刑者から虐待されていたことを明かしている。

 こうした状況を受けて、地区を管轄するチェシャー(Cheshire)警察は、事件の再捜査に着手。現在はウッドワード氏のインタビューを読んだ11人の人物から、話をしたいという申し出を受けているという。

 英国サッカー協会(FA)は現在、性的虐待の被害に遭った元選手のためのホットラインを開設しており、被害者の数はさらに増える可能性もある。(c)AFP/Tom WILLIAMS