■「ポリティカル・コレクトネス」が戦場

 米バージニア大学(University of Virginia)で極右運動を専門とする研究者、ニコール・ヘマー(Nicole Hemmer)氏はAFPの取材に対し、トランプ氏の出現は「ゲーム・チェンジャー(状況を一変させる出来事)」だったと指摘する。

 ヘマー氏は、オルト・ライトはトランプ氏の選挙で「自分たちは大勝利を収めた、米国社会の主流派に格上げされた」と考えていると説明。「彼らが米国社会の主流派の中心的存在になることはないだろうが、トランプ氏勝利によって間違いなく存在感を増し、より強大な政治権力を手にしたという感覚を彼らはつかんでいる」と述べた。

 バノン氏がトランプ氏の選挙陣営に参加するまで運営していた保守系ニュースサイト「ブライトバート・ニュース(Breitbart News)」で今年3月に発表された宣言では「オルト・ライトは、文化を守るためには国民の間である程度の分断が生じることは不可欠だと捉えている」との考えを明示し、さらにこの分断は人種間や宗教間で生じるはずだと述べている。

 またオルト・ライトは、人種間の優劣や優生思想に基づく疑似科学論を信奉し、ユダヤ人やイスラム教徒への敵意を公然と示している点で、欧州の極右とのつながりを主張している。

 人種差別問題の調査やヘイトグループの監視に取り組んでいる「南部貧困法律センター(Southern Poverty Law Center)」は、オルト・ライトの根底には、白人のアイデンティティーが多文化主義やポリティカル・コレクトネス(中立で差別を含まない発言や行動)、公民権運動などによって脅かされているという不安感情があると指摘する。

 一方、ヘマー氏は、オルト・ライトがこれまでの白人至上主義運動と異なるのは、米国にとって目下の最大の脅威はポリティカル・コレクトネスだという考えが原動力になっている点だと主張する。「そこから、人種差別や反ユダヤ主義、女性差別などの言動は誰かを攻撃したいがためではなく、(ポリティカル・コレクトネスから解放されて)自由を謳歌(おうか)するためなのだ、という考えに向かい」、「(自分たちを)ある種、知的な形で正当化している」と説明する。