■遺族に返すまで諦めない

 ニスが塗られた濃い色の木の骨壺には小さな額が付いており、「レベッカ・メネス・ペレス 2010年9月14日生、2014年3月8日死去」と書かれている。翼を広げた金属製の天使が施され、その両脇には白い水玉模様が入った赤いハート形のシールが貼られている。

 もう一つの木製の骨壺はより大きく、「グスタボ・ゲラ・オルドニャ 1973年生、2000年死去」と書かれている。

 元記者で、市政府のメディア部門で働いていたこともあるアルバラド氏と同僚2人は、電話帳からこれら骨壷の所有者を探そうと試み、近しい間柄にあると思われる人物にようやくたどり着いた。そこで、さらなる情報を得ようと市の市民登録担当部署を訪ねたが、今度はプライバシー保護を理由に情報提供を拒まれてしまった。

 しかし、アルバラド氏のこうした努力が報われたケースもある。例えば、ある男性が忘れていった医療記録だ。医療記録には、脳腫瘍があるために緊急手術が必要だと書かれていた。この時は、持ち主の親戚を見つけることができ、持ち主の男性からもひどく感謝されたという。

 2つの骨つぼの持ち主はまだ見つかっていないが、アルバラド氏は「遺族に返したい。絶対に諦めない」と語った。

 アルバラド氏自身も毎日、地下鉄で90分かけて通勤している。その間、誰も忘れ物をしていないか、電車内を「隅々まで」見渡しているという。「みんな信じられないような物を忘れていくからね」 (c)AFP/Jennifer GONZALEZ COVARRUBIAS