【11月18日 AFP】19世紀の画家ビンセント・ファン・ゴッホ(Vincent van Gogh)の「失われた」スケッチブックとされる作品の真贋(しんがん)性をめぐる論争が17日、新たな局面を迎えた。作品を本物と考える専門家らが、贋作と一蹴しているオランダ・アムステルダム(Amsterdam)のゴッホ美術館(Van Gogh Museum)に対し、公開討論を要求した。

 専門家らは、美術館側の鑑定内容に逐一反論した上、同館がゴッホ作品の真贋を判断する「独占権」を振りかざしていると批判。一方の美術館側も主張を曲げず、AFPの取材に対し、公開討論には自信をもって臨むが、その前に「われわれが提示した質問に対する明確な回答がほしい」と要求している。

 本物と主張する側の中心的人物であるカナダ人美術史家のボゴミラ・ウェルシュオフチャロフ(Bogomila Welsh-Ovcharov)氏は、スケッチを偽物と疑う美術館側に強く反発。実物10点を見せたにもかかわらず、それを十分に吟味することなく、スケッチの写真に基づいて判断を下したとして、美術館を非難している。

 また、このスケッチブックについて先に「ゴッホ作品の全歴史で見ても最も革命的な発見」だと評価していた英学者のロナルド・ピックバンス(Ronald Pickvance)氏(85)も、「1点目から65点目まで、全部間違いない。それ以外に言い足すことはない」として、偽物である可能性を改めて否定した。

 一連のスケッチは、ゴッホが耳を切り落とした場所として知られる南仏アルル(Arles)で、滞在先だった有名な「カフェ・ド・ラ・ガール(Cafe de la Gare)」の帳簿に描いたものとされる。

 ウェルシュオフチャロフ氏によると、カフェからは小さな日誌も見つかり、そこには耳の治療に当たったフェリクス・レー(Felix Rey)医師が「1890年5月20日、ゴッホの代理で来店」し、大型のスケッチブックを残していったとの記録が残されていたという。(c)AFP