■2氏の政策と財政赤字の行方

 トランプ氏の経済計画は規制緩和を通じて経済活動を復活させようとするものだ。今年1.8%と予想されている米国の経済成長率を3.5~4%にまで引き上げると約束しており、その手段として連邦法人税率の引き下げ(35%から15%へ)や富裕層の所得税減税を掲げている。これらが実現されれば財政赤字は急増するだろう。

 この他、トランプ氏は貿易協定の交渉見直しや、「オバマケア(Obamacare)」と呼ばれる医療保険制度の撤廃、移民の不法流入を防ぐための米メキシコ国境沿いの壁建設などを公約している。

 対照的にクリントン氏は、経済政策のほとんどはオバマ政権が歩んできた道を忠実に引き継ぐだろう。クリントン氏の掲げる計画には、富裕層に対する増税、連邦最低賃金の引き上げ、地方大学による貧困層向けの教育無償提供、オバマケアの改革などが含まれている。クリントン氏の計画でも財政赤字は増えるだろうが、トランプ氏の掲げる政策ほどではないだろう。

 一方、トランプ氏は経済学者たちを懸念させている。ノーベル賞(Nobel Prize)受賞者数人を含む370人を超える経済学者は米紙ウォールストリート・ジャーナル(Wall Street Journal)に「別の候補を選ぼう」とする公開書簡を掲載した。学者らはこの中で「ドナルド・トランプは、この国にとって危険で破壊的な選択だ。彼は有権者を誤解させ、陰謀論によって公的機関の信用をおとしめ、意図的な妄想をふりまいている」と酷評した。

 トランプ氏は有権者に対し、不動産開発業者が契約をまとめようとする時のように単刀直入にまくしたてるため、起業家の中にはこうした「大げさで感情的で突拍子もない」話術に魅了される人もいると「経済発展委員会」のオドランド氏は指摘する。

 他方、英経済調査会社キャピタル・エコノミクス(Capital Economics)のアナリストらは、トランプ氏の話は誇張されすぎではないかという。「トランプ氏が勝利しても、多数の人々が不安を抱いているような過激な変化は生じない可能性が高い。大統領執務室に入ってしまえば、同氏は貿易政策に関する強硬論を和らげる可能性もあり、また財政政策に関する同氏の計画は議会の承認を受けるのに苦心するだろう」という。

 ただトランプ氏が勝利した場合、選挙終了直後の影響として、米金融市場が下落する可能性が高い。トランプ氏が勝てば、米S&P総合500種指数は選挙の前週に比べ約5%下落し、2000ポイントを割るだろうとの分析結果も出ている。この現象は、今年6月27日に実施された英国民投票の直後、EU離脱派勝利に衝撃を受けた市場で起きたが、この時はさほど時間はかからずに回復した。(c)AFP/Virginie MONTET