■「独裁者ではない」

 指導者として世界を飛び回り始めた1992年には、ボスニア・ヘルツェゴビナ紛争で負傷したという武勇伝があるハリルホジッチ監督は、引っ込み思案な性格とは程遠く、その「率直な」物言いは、「忍者、ロボット、相撲」などの文化や、礼儀正しさを重んじることでも知られる日本では、これまで必ずしも好意的に受け取られてこなかったと認めた。

 UAE戦に敗れた後、選手との不仲が取り沙汰されたハリルホジッチ監督は、つなぎ役として五輪代表チームを率いた手倉森誠(Makoto Teguramori)氏をコーチとして迎えることになった。

 ハリルホジッチ監督は、自身について「独裁者ではない」と強調しながらも、その遠慮のない接し方が、日本では人を「傷つける」こともあると認め、「日本のようなチームは、もっと高いレベルでプレーしなくてはならない。自分はこのプロジェクトに対して、真剣に取り組んでいる。自分にはこだわりがあり、それを主張することは、全員に受け入れられるわけではない」と話した。

 2014年W杯ブラジル大会(2014 World Cup)でアルジェリアをベスト16に導き、「まだ鳥肌が立つような興奮がある」というハリルホジッチ監督は、日本代表指揮官としてこれまで13勝3敗5分けの通算成績を残しており、その結果には満足している。

 コミュニケーションに問題があるとはいえ、ハリルホジッチ監督はACミラン(AC Milan)の本田圭佑(Keisuke Honda)を筆頭に、ボルシア・ドルトムント(Borussia Dortmund)の香川真司(Shinji Kagawa)や、サウサンプトン(Southampton FC)の吉田麻也(Maya Yoshida)ら海外組との仕事を楽しんでいる様子で、「彼らとの仕事は本当に楽しい」と話し、その規律の正しさを称賛している。

 その一方で、欧州のクラブでプレーする選手が費やせる時間が常に限られており、国際試合のために到着する際には時差ぼけに悩まされていると訴えた。

 ハリルホジッチ監督が率いる日本代表の次戦は、今月15日にホームの埼玉スタジアム2002(Saitama Stadium 2002)で行われる、絶対に負けられないサウジアラビア戦となっている。指揮官は、「(W杯に向けて)私は野望に満ちているが、先の道のりは簡単ではない」と語り、抜かりない。(c)AFP/Anne BEADE