【10月29日 AFP】(更新)米軍当局は28日、シリア東部上空を先週飛行中だった米軍用機にロシア軍の戦闘機が異常接近する出来事があったと明らかにした。各国の戦闘機で混雑するシリア上空での重大事故の危険性が改めて浮き彫りとなった形だ。

 米空軍のジェフ・ハリギアン(Jeff Harrigian)中将によると、今月17日夜、偵察機を護衛していた露戦闘機が、米軍機に「ニアミス」する事象が発生。露戦闘機は、米軍機から約800メートル以内の位置まで接近したとされる。

 匿名で取材に応じた別の米軍関係者によると、両機の距離は、露軍機のエンジンが起こした乱気流を米軍パイロットが感じられるほど近かった。

 両機は夜間にライトを点灯せず飛行していたため、露軍機のパイロットが米軍機の存在に気付かなかったことが異常接近の原因とみられている。

 米軍主導の有志連合は昨年、機体同士の衝突事故を回避するため、ロシア軍との間に、互いに配備している軍用機のおよその位置や飛行目的を知らせ合うホットラインを設置した。

 今回は米軍側のパイロットが緊急無線でロシアの戦闘機に知らせようとしたものの、連絡がつかなかった。翌日に米軍側がホットラインを通じてロシア側に問い合わせたところ、米軍の軍用機にパイロットが気付かなったとの回答を受け取ったという。

 ハリギアン中将によれば、この6週間、ほぼ10日おきにロシアの戦闘機が米国主導の有志連合の航空機に故意に接近する事態が増えているという。

 有志連合はシリアの一部地域の上空で頻繁に航空機や無人機を飛ばしている。有志連合が支援している部隊は、イスラム過激派組織「イスラム国(IS)」が「カリフ制国家」の事実上の首都としているシリア北部ラッカ(Raqa)を奪還する作戦計画を進めているが、計画の進行にしたがってシリア上空の飛行はさらに増えるとみられている。(c)AFP/Thomas WATKINS