■うそは「習うより慣れろ」

 実験の結果についてシャロット氏は、「人々は、うそが自分と相手にとって有益である場合に最も多くうそをつく」と話し、「うそが自分にだけ有益で、相手に損害を与える場合は、うそが少なくなる」と指摘した。

 事実からどの程度逸脱するかや、不正直さがエスカレートする度合いについては、被験者によって大きく異なっていた。また、事前の質問表で、率直さの程度が低いと特定されていた被験者は、実験中にうそをつく可能性も高かった。

 だが、大半の被験者は、ごまかしのパターンに容易に陥るだけでなく、時間とともにますます大胆なうそをつくようになった。

 研究では、被験者25人に対しては、機能的磁気共鳴断層撮影法(fMRI)による脳スキャンを実験中に実施。感情を処理する脳の部位である「へんとう体」が、うそをつく行為の発生時に強い反応を示した。少なくとも最初はそうだった。

 だが、うそが大胆になるほど、へんとう体の反応が徐々に低下。研究チームはこのプロセスを「感情適応」と呼んだ。

「例えば、初めて税金をごまかす時などは、相当に後ろめたく感じるかもしれない。この悪感情が、不正直な行動に歯止めをかける」とシャロット氏は説明。「だが、次にごまかしをする際には、すでに適応しているために、行動を思いとどまらせるための否定的な反応が弱くなる」と続けた。

 脳の感情をつかさどる部位の活動低下が、不正直になる傾向を助長する一因なのか、あるいは単にその傾向を反映しているにすぎないのかについては、まだ不明なままだ。

 だが、今回の研究からは避けられない結論が一つ導き出される──それは、うそを多くつくほど、うそが上達するということだ。シャロット氏は「感情の喚起を抑制すれば、人にうそを見破られる確率が下がる可能性がある」と指摘している。(c)AFP/Marlowe HOOD