【10月17日 AFP】先週、レストラン・ホテルの格付け本「ミシュランガイド(Michelin Guide)」が登場したばかりの米首都ワシントン(Washington D.C.)の地元紙ワシントン・ポスト(Washington Post)の料理批評家、トム・シーツェマ(Tom Sietsema)氏が、市内のレストランを訪れるときの「心得」について語った。

 2000年に同紙のレストラン担当になって以来、公正な評価に影響を与えかねない特別待遇を嫌い、匿名での活動を徹底しているというシーツェマ氏。AFPの取材には、「CIA(米中央情報局)みたいでしょう。(レストランとの)ちょっとしたいたちごっこです」と語り、実名で予約をしたことは一度もなく、「クレジットカードも違うものを使うし、電話番号も友人のものを使わせてもらっている」と続けた。

 今回の取材でも、写真や動画の撮影はNGで年齢も伏せたままだ。写真は絶対に撮られないようにしていると話し、休暇中のパーティーでもカメラの前には立たないと用心深い。

 ミネソタ(Minnesota)州出身のシーツェマ氏は、米首都のジョージタウン大学(Georgetown University)で国際政治学の学位を取得。人生の岐路となったのは、1980年年代初頭にワシントン・ポストの新入社員枠に応募したことだ。

 シーツェマ氏が受けた面接は、ボブ・ウッドワード(Bob Woodward)氏の助手の仕事だった。1970年代にカール・バーンスタイン(Carl Bernstein)記者と共にウォーターゲート(Watergate)事件をスクープした伝説的な調査報道記者だ。

 ウッドワード氏はシーツェマ氏に興味を示さなかったが、同紙の料理批評家に助手として採用された。「料理はファンタジーであり、政治であり、経済であり、癒やしであり、興味がつきないものだと気づかされました」とシーツェマ氏は振り返った。

 週に10回以上レストランで食事をする生活を17年近く続けており、店での滞在時間も「週40時間」に上るという。スリムな体型は維持しているが、「年間を通じて、人々が思うよりも体に悪いものを食べている」と述べ、いいことばかりではないとも説明した。

 2015年に、全米を2か月かけて移動しながら、最も食べ物に力を入れている都市を探ったというシーツェマ氏。この取り組みを企画したワシントン・ポストについては「政治と同じくらいレストランを重要視しています」と冗談混じりにコメントした。(c)AFP/Elodie CUZIN