■下がる士気、相次ぐ不祥事

 当然ながら近年はミサイラーたちの士気が下がっており、空軍は彼らの生活の質の向上を図ろうとさまざまな取り組みをしている。夜中も使えるジムが基地に設置されたほか給与も引き上げられ、改善された子育て支援プログラムも提供されている。

 米空軍は今後20年ほどでミニットマン3を段階的に全廃し、2020年代末から地上配備戦略抑止力(Ground Based Strategic DeterrentGBSD)と呼ばれている新ミサイルの導入を始める方針。

 9月26日にアシュトン・カーター(Ashton Carter)米国防長官がミサイル施設の近くにあるマイノット空軍基地(Minot Air Force Base)を訪れた際、エリン・パウエル(Erin Powell)中尉は記者団に対し、核兵器部隊に入ったのは希望していたキャリアパスではなかったが、今ではその役割を担えることを誇りに思っていると語った。

「とても身の引き締まる思いでした」と、彼女は最初の24時間勤務でその仕事の責務の大きさを感じたと語った。だが、同僚たちからは「背中を軽く叩かれ、『同情するよ』と言われた」らしい。

 ミサイル関連の仕事に対する否定的な見方は、ソ連が崩壊した頃からみられるようになった。その任務の重要性が徐々に低下し、キャリアパスとして魅力がなくなっていったためだ。

 核ミサイル関連部隊では、技能習熟度試験でカンニングに関与したとして数十人が処分されたほか、違法薬物関連で複数の要員が調査を受けた。さらに数人の幹部が個人的な不祥事で解任された。米国防総省は2014年、核ミサイル部隊に「誇り」を取り戻すだめの「行動計画」を発表している。

「ほとんどの人が任務について深く考えていないようだ。好ましくはないが、与えられた仕事をそのまま遂行しているという意味では、いいことでもある」と、カーター国防長官はマイノット空軍基地で兵士たちに向かって述べた。

「健康的な環境だ」と語った部隊指揮官のジャレド・ネルソン(Jared Nelson)中佐は「(核ミサイルの仕事は)私の望んだキャリアではなかったが、望んだ仕事に就いた同僚たちよりも、私は家族との時間を大切にできている」と述べ、世界中に派遣されるパイロットに比べてミサイラーの仕事は安定していると語った。(c)AFP/Thomas WATKINS