【11月15日 AFP】チャック・ヘーゲル(Chuck Hagel)米国防長官は14日、米国の核戦力は士気の低下と人員不足、管理不行き届きに悩まされており、その安全性と有効性が危うくなる恐れがあると述べた。

 ヘーゲル長官は、国防総省が実施を命じた2つの調査から得られた厳しい結果を記者団に公表し、「今対処しなければ、将来において核戦力を構成する諸要素の安全性とその保安、有効性を損ないかねない組織的な問題が存在することが明らかになった」と述べ、「わが国の核戦力部隊への投資と支援が不十分な状態があまりにも長年にわたって継続したため、増大するストレスに対応する余裕が少なくなりすぎてしまった」と指摘した。

 ヘーゲル長官は、核戦力の優先順位を高め、指揮系統を再編し、核戦力部門の要員にその任務の重要性を改めて伝え、予算と人員を増やす「行動計画」を明らかにした。

 複数の当局者によると、米空軍は士気を上げるためICBM要員の給与を上げるとともに、「核抑止力関連の任務」で功績のあった要員に授与する新しい勲章を創設する方針。ヘーゲル長官は、今後5年にわたり核兵器関連予算の年10%の増額を要求していく方針も明らかにした。

 また国防総省によると、ヘーゲル長官は核兵器を搭載した米海軍の潜水艦の維持に携わる民間人を増やすことを既に承認しているほか、空軍は核兵器部隊の人手不足に対応するため軍人と民間人合わせて約1100人を増員する計画だという。

 米軍の核兵器部隊では、陸上配備型の大陸間弾道ミサイル(ICBM)運用部隊で数十人の空軍兵士が技能習熟度試験のカンニングに関与するなどの不祥事が相次いだ。地上発射型ICBMを担当していた空軍少将がロシア訪問中の飲酒に関係する「不適切な振る舞い」を理由に免職処分にされるなど処分を受けた幹部も多い。

 最近のスキャンダルの大半は空軍が管理する陸上発射型のミサイルに関連するものだが、海軍でも核ミサイルを装備した潜水艦で勤務する兵士たちのカンニングがあった。

 このような問題の悪化を許したのは何故かとの質問に、ヘーゲル長官は、国防総省はイラクとアフガニスタンの「2つの大規模地上戦」に集中するあまり、国全体が核兵器の役割にあまり注意を払わなくなっていたからだと答えた。(c)AFP