【9月30日 AFP】南米コロンビアに住むミリアム・バネガスさんは10年間、実の息子に会うことができなかった。同国の左翼ゲリラ組織「コロンビア革命軍(FARC)」が山中に連れ去ってしまったからだ。しかし26日、FARCと政府が和平協定に署名したことで、息子を取り戻すことができた。

■和平と共に帰ってきた息子

 この歴史的な和平協定の承認に向けてFARCが準備を進めていたころ、バネガスさんはFARCが開いた会議で撮影された動画の中に自分の息子、パブロ・エステバンさんが写っているのを見つけた。バネガスさんは「息子は13歳の時にいなくなった。FARCに誘拐された。これまで必死の思いで探し続けてきて、先週、テレビに映った会議にあの子がいた」と語った。

 青とピンクの花柄の黒いワンピース姿のバネガスさんは、息子との再会の瞬間を思い出すと涙をこらえることができない。FARCの拠点はコロンビア南西部の辺境地、エルディアマンテ(El Diamante)にある。暑さと湿気の中「あそこまで行くのに、バイクで6時間もかかった」とバネガスさんは振り返った。

 たどり着くと、バネガスさんが握りしめていた写真の中の少年の姿を、FARCの女性メンバーが確かめた。女性はバネガスさんを野営地へ案内した。息子は青年になっていた。

 バネガスさんは声を震わせながら「息子を抱きしめて泣いた。私がどれほど幸せか、皆さんには想像もできないと思う」と語った。

■野営地の巨大スクリーンで

 この辺境の草原の中にある野営地に26日、巨大スクリーンが用意された。放映された署名式の様子を、数百人のFARC戦闘員らが見守った。

 FARCのティモレオン・ヒメネス(Timoleon Jimenez、通称ティモチェンコ Timochenko)最高司令官が協定に署名し、FARCの政党への移行をたたえる演説を行うと、拍手が湧き起こった。

 コロンビア当局の推計によると、26万人が命を落とし、4万5000人が行方不明になり、690万人が家を追われた内戦が、この和平協定で正式に終結した。