【9月13日 AFP】これまで四大大会(グランドスラム)の歴史を塗り替え続けてきた女子テニスのセレーナ・ウィリアムス(Serena Williams、米国)が、世界ランキング1位のアンゲリク・ケルバー(Angelique Kerber、ドイツ)を筆頭とする才能にあふれ、恐れを知らないライバルたちの台頭を受け、新たな困難に直面している。今年1月に行われた全豪オープンテニス(Australian Open Tennis Tournament 2016)でケルバーがセレーナを破ったことで、女子テニスに新たな流れが生まれた。

 全仏オープンテニス(French Open 2016)決勝で22歳のガルビネ・ムグルサ(Garbine Muguruza、スペイン)に敗れたセレーナは、リオデジャネイロ五輪の3回戦で21歳のエリナ・スビトリーナ(Elina Svitolina、ウクライナ)に敗退。そして今回の全米オープンテニス(US Open Tennis Championships 2016)準決勝ではカロリーナ・プリスコバ(Karolina Pliskova、チェコ)に屈し、それまで持っていた無敵のオーラに陰りがみえた。

 今回の全米オープン決勝では、プリスコバを撃破したケルバーが今季2個目となるグランドスラムのタイトルを獲得し、セレーナの世界ランク1位連続在位記録を止めるとともに、自身の世界ランク1位の座を手にした。

 セレーナの今後については未定だが、コーチを務めるパトリック・ムラトグルー(Patrick Mouratoglou)氏は、「今年はいま一つだ。グランドスラムで1勝しかできなかった。セレーナにとってはあまりよくない」とコメントし、ウィンブルドン選手権(The Championships Wimbledon 2016)では優勝したものの、ツアー2勝にとどまっている現状は、同選手の水準に達していないとの見解を示している。

 こうした現実は、オープン化以降で最多となるシュティフィ・グラフ(Steffi Graf)氏の記録に並ぶ22回のグランドスラム優勝を誇り、マーガレット・コート(Margaret Court)氏が持つ歴代最多の24勝まであと2勝に迫ったセレーナの未来がより複雑化しているということなのかもしれない。

 国別対抗戦フェドカップ(Fed Cup)で米国を率いるメリー・ジョー・フェルナンデス(Mary Joe Fernandez)監督は、「セレーナが消えようとしているとは思えない。私にはもっと勝利を挙げて、グラフ氏の記録を破ろうとしているようにみえる。しかし、その道が険しくなっているのも事実。年齢を重ね、若手が台頭すれば難しくなるものだ」と語った。

「受け入れなくてはならない。女王になろうとしているのであれば、重圧を必要とするものだ。より強くなれば、より多くのプレッシャーがのしかかる」

 一方、28歳のケルバーは、初めて世界ランク1位の座に君臨した年齢としては史上最年長となるものの、今月35歳を迎えるセレーナと比較すれば若手の一人だといえる。

 今回の全米オープンの結果を受けて、ケルバーは中国の李娜(Na Li、リー・ナ)氏についで2人目となる28歳を過ぎてグランドスラムを初優勝した選手になった。目立たぬように自身のゲームの進化に取り組んできたケルバーだが、これからは世界ランク1位の称号が持つ輝かしいスポットライトの下でプレーすることになった。

 セレーナは、グラフ氏と並んで186週間にわたり世界ランキング1位に君臨し、グランドスラム7勝を含むツアー24勝を挙げた。しかし、重きを置くグランドスラムに向けて体を保護するため、ますます出場する大会を選ばなくてはならない。

 グランドスラム通算18勝のマルチナ・ナブラチロワ(Martina Navratilova)氏は、「セレーナが完全なスケジュールでプレーしていれば、世界ランキング1位から転落する可能性は低かったと思う」としながらも、「8大会にしか出場していないのに、世界ランク1位に立っていたことが信じられない」と述べた。

「いろいろなことが起きているとは思うけれど、若い世代が頭角を現してきているのは間違いはない」と話すナブラチロワ氏は、今年の全豪でケルバーがセレーナを破ったことが若手を活気づけ、これまではセレーナに勝つことができないと思っていた選手たちの間に「集団的な自信」が生まれたとみている。

「ケルバーから始まった。彼女がセレーナに勝利したことで、ほかの選手が『私たちでもチャンスがある』と思えるようになった」

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