【9月12日 AFP】全米オープンテニス(US Open Tennis Championships 2016)、男子シングルス決勝が行われた11日、ノバク・ジョコビッチ(Novak Djokovic、セルビア)を破って自身3回目のグランドスラム(四大大会)制覇を果たしたスタン・ワウリンカ(Stan Wawrinka、スイス)。しかし31歳のワウリンカにとって、今回の優勝までの道のりは、かつてないほど厳しいものだったという。

 対戦相手のジョコビッチから、誰よりも大舞台で輝く選手と評されるワウリンカは、実際に3回のグランドスラム決勝進出で、3回ともタイトルを獲得している。しかし本人によれば、今回の決勝の前は極度の緊張に襲われていた。

 ワウリンカは、「更衣室で震えていた」と話し、コーチのマグヌス・ノーマン(Magnus Norman)氏と最後の確認をしている最中には「泣き出して」しまったことを明かした。

「どうしようもないほど震えていた」と話すワウリンカ。それでも、「体は動いてる。自分のテニスもできている。コートへ出て戦え。そうすれば勝つチャンスはある」と自分に言い聞かせ、自らを奮い立たせ続けたという。

 そして、コートではその気持ちをプレーで表現し、第1セットを落としながらも、6-7(1-7)、6-4、7-5、6-3の逆転でグランドスラム優勝12回のジョコビッチから勝利を収めた。

 決勝へたどり着いた時点で、ワウリンカは今大会のプレー時間が18時間に迫るなど、すでに限界に近い状態にあった。

 3回戦では無名のダニエル・エヴァンス(Daniel Evans、英国)に敗戦寸前まで追い詰められながら、5セットマッチを制して逆転突破。準々決勝では優勝経験者のファン・マルティン・デルポトロ(Juan Martin Del Potro、アルゼンチン)の反撃をなんとかしのぎ、準決勝も2年前のファイナリスト錦織圭(Kei Nishikori)に先行される苦しい試合展開だった。

 ワウリンカは、「肉体的にも、精神的にも、今まで経験した中で一番厳しいグランドスラムだったと思う。試合が始まった時点で疲れていて、第3セットにはけいれんもあった」と話す。第4セットには痛みも感じた。それでも、「そうしたことを表には出さず、ただ全力で戦い続けて勝利を目指す」と心に決めていた。

 2015年の全仏オープンテニス(French Open 2015)、そして今回の全米オープンと、ワウリンカは二度、グランドスラム決勝の大舞台でジョコビッチを破ることに成功している。勝因について本人は、ここまで長丁場の戦いが続くなかで、決勝がジョコビッチとの苦しい試合になって当たり前という覚悟ができていたと話している。

「秘訣(ひけつ)なんてないよ。ナンバーワンの選手を破りたいなら、すべてを出し尽くさなくちゃならない。苦しみを受け入れなくちゃならないんだ。そして、苦しみをむしろ楽しむくらいにならないとね」

(c)AFP/Rebecca BRYAN