【9月5日 AFP】サッカー韓国代表の孫興民(Heung Min Son、ソン・フンミン)が、所属するイングランド・プレミアリーグのトッテナム・ホットスパー(Tottenham Hotspur)へ戻り定位置確保を目指すため、2018年W杯ロシア大会(2018 World Cup)アジア最終予選のシリア戦を前に代表チームを離脱した。

 24歳の孫は2015年8月、アジア人最高となる2200万ポンドの移籍金でバイヤー・レバークーゼン(Bayer Leverkusen)からトッテナムへ加入した。

 しかし、エリク・ラメラ(Erik Lamela)やクリスティアン・エリクセン(Christian Eriksen)、ハリー・ケイン(Harry Kane)、デレ・アリ(Dele Alli)の陰に隠れてリーグ戦の先発は13試合にとどまり、1990年以降では最高となるリーグ3位に入ったチームのなかで、高い期待に見合う結果を残すことができなかった。

 そしてこの夏も、リオデジャネイロ五輪出場とW杯予選のため、プレシーズンの大半でチームに帯同せず、新シーズンのプレミアリーグも開幕から3試合連続で欠場と、2季目でのレギュラー奪取に向けて厳しい状況に置かれていた。

 そこで孫は、中国との予選初戦を3-2で制したことを受けて、マレーシアで行われるシリアとの第2節は英ロンドン(London)から母国の勝利を願うことに決めた。

 大韓サッカー協会(KFA)も、トッテナムが五輪に孫を送り出してくれたことを踏まえ、強制力があるわけではないが孫の早期帰還を認めた。

 孫は、「僕のいたいチームはトッテナムだし、努力して最高のプレーをしなくてはいけないと思っている。状態はいいし、その準備はできている。代表の同僚や監督には申し訳ないが、応援しているし、シリア戦でいい結果を出してくれることを願っている」とコメントした。

 孫にとって、この数か月は移籍のうわさが絶えないストレスのたまるものだった。

 まずは15-16シーズン終了直後の5月、英紙デーリー・テレグラフ(Daily Telegraph)が、クラブが孫の売却を検討していると報道。うわさはその後もイングランドとドイツ国内で根強く残り、移籍市場の終了直前には、ボルフスブルク(VfL Wolfsburg)が孫を獲得したという報道も出た。

 本人は、「移籍については何も聞いていない。スタジアムの外の出来事は考えたくないし、プレーだけに集中していたい。移籍のうわさが出るのはいい兆候じゃないけど、ドイツでは認められているというふうに、いい意味にとらえている」と話している。

 クラブが義務ではないにもかかわらず五輪へ孫を送り出したのは、五輪のメダル獲得に伴う兵役免除を期待してのことだった。これが実現していれば、孫がトッテナムでプレーする期間が伸び、将来の移籍金が増加する可能性もあった。

 しかし、リオ五輪で韓国は、3つの絶好機を逃して伏兵ホンジュラスに敗れ、準々決勝敗退。孫のメダル獲得を目指す戦いは涙とともに終わりを迎えていた。(c)AFP/David Jones