■自然界の「協力」

 論文によると、チンパンジーは場合によっては「他者に対して直接抗議する」ことで、これらの競争の形態を克服したという。また、たかりをする者がいるところでの作業を拒否することもあった。これは「回避」として知られる戦略で、人間も用いる。

 さらには、たかりをする者をかわすために、力関係がより上位のチンパンジーが介入したケースもあった。これは研究者らが「第三者罰」と呼ぶ行動で、やはり人間も用いる戦略だ。

 サチャック氏は、「今回の実験では、自分自身の実施戦略を採用する自由をチンパンジーに与えた。その結果、彼らは極めて上手に競争を避け、協調を好むことが分かった」と述べた。

 論文の共同執筆者でエモリー大学の霊長類専門家、フラン・デ・ワール(Frans de Waal)教授(心理学)は、動物界での生存が協力によって支えられている程度について、今回の研究は科学者らに再検討を促すはずだと指摘した。

「人間の協力は独特のものだという主張が文献で広く見受けられるが、協力の進化に関してこれまでに得られている最も優れた見解を、動物研究から直接得ているという点で、これは特に興味深い。アリからシャチまで、自然界は協力で満ちあふれている。人間に最も近い霊長類のチンパンジーが、競争やたかり行為を阻止する方法を熟知していることが、今回の研究で初めて示された。協力するが勝ち、なのだ」とデ・ワール教授は語った。(c)AFP