【8月22日 AFP】血まみれでやつれ、うつろな目をしたオムラン(Omran)君の映像は、世界中の人々に衝撃を与え、シリアに対する空爆での民間人犠牲者の象徴として注目を集めたが、内戦で荒廃した同国では、こうした子どもたちの数多くが、爆弾や包囲攻撃にさらされた日常から心に深い傷を負っている。

 空爆の衝撃で呆然とする4歳児の映像は、世界中のメディアで大きく取り上げられた。米政府は、5年にわたるシリア内戦の「本当の顔」とコメントした。

 反体制派が掌握するアレッポ(Aleppo)東部の小児科医、アブ・バラ―(Abu al-Baraa)氏は、AFPの取材に対し、「オムラン君のケースは稀ではない。われわれは毎日、彼のような患者を数十人治療している。その大半は、より重傷だ」と語った。

 そして、襲撃やがれきの下敷きになって死んで行く子どもたちの映像は、動画共有サイトなどで見ることもできるが、世界ではこれが重要視されていないと述べ、意味のない言葉ばかりが聞こえてくると嘆いた。

 オムラン君の写真が公開されて以降、そのイメージは繰り返し加工され、風刺がなどの作品のモチーフとして用いられている。

 スーダン人アーティストのハリド・アルバイ(Khaled Albaih)さんもその一人だ。

 アルバイさんの作品には、昨年9月に家族と共に欧州に向かう途中の海難事故で死亡し、トルコの海岸に打ち上げられたアイラン・クルディ(Aylan Kurdi)君(当時3)とオムラン君の姿が並べて描かれている。作品上部には、「シリアの子どもたちの選択肢」と太文字で書かれ、オムラン君の絵の下には「とどまった場合」、アイラン君の方には「離れた場合」とそれコメントが添えられている。

 シリアでの内戦が始まって以降、これまでに29万人以上が死亡している。このうちの1万5000人は子どもだ。また人道的支援を必要としている子どもの数は600万人を上回り、同60万人が包囲攻撃にさらされている。

 国連児童基金(ユニセフ、UNICEF)によると、シリアの子どもたちの約3分の1は、2011年3月の内戦勃発以降に生まれているため、争いの日常しか知らず、ゆっくりと時間をかけて成長する機会が与えらていないという。(c)AFP/Maya Gebeily and Rana Moussaoui