【8月14日 AFP】オーストラリア北東部クイーンズランド(Queensland)州の片田舎で、急病患者の搬送に向かった医療用航空機が闇夜の中、トイレットペーパー20個を燃やした明かりを頼りに着陸するという出来事があった。へき地医療の難しさを浮き彫りにする逸話として話題を呼んでいる。

 7月31日に起きたこの出来事は、航空医療サービス「ロイヤル・フライングドクター・サービス(Royal Flying Doctor Service)」がSNS大手フェイスブック(Facebook)に投稿すると、またたく間に話題となった。操縦士のジェフ・コブデン(Geoff Cobden)氏は、これ以外に安全な着陸方法はなかったと語っている。

 患者は農場で働く女性。危篤状態で、数百キロ離れた最寄りの病院に航空搬送することになった。「着陸地点を照らす方法を話し合い、トイレットペーパーが最善の選択だとの結論を見いだした」とコブデン氏はAFPに話した。

 患者はロイヤル・フライングドクター・サービスの拠点から約250キロ、空路で30分の距離にあるガソリンスタンドに運ばれていた。そこで現地の人々に指示し、トイレットペーパーを軽油に浸して幅30メートルの間隔で並べ、約1時間にわたって燃やしてもらうようにした。「無線で飛行機が現場上空に到着したら走って全て(のトイレットペーパー)に点火してもらうようにした」という。

 コブデン氏によると、明かりのない広大な農場に飛行機を着陸させる場合、トイレットペーパーを燃やすのがよいという。「最悪の場合」は前照灯をつけた車を並べるが、たいていのガソリンスタンドには十分な量のトイレットペーパーがあるという。

 マウントアイザ(Mount Isa)を拠点とするコブデン氏らの航空医療チームは医師と看護師、操縦士の3人構成で、フランスの国土面積より広い76万平方キロの地域を担当する。近隣の牧場で働く人々にとって唯一の医療手段となることも多い。(c)AFP