【8月12日 AFP】リオデジャネイロ五輪で行われた競泳競技では、米国のマイケル・フェルプス(Michael Phelps)が自身が持つ五輪金メダルの最多獲得記録をさらに伸ばすと同時に、肩に赤くて丸い奇妙なあざがある状態でレースに臨み、注目を集めた。

 このあざは、中国伝統の「カッピング(吸玉)療法」によるものだ。中国語で「抜罐(ばっかん)」と呼ばれるこの治療法は、熱した小さなガラス瓶を肌に置き、その熱によって皮膚を瓶の内側に3センチほど吸い込ませて患部に血を集めるもので、主に痛み軽減効果があるとされている。

 熱したガラス瓶の代わりに、吸引カップが用いられることもある。インスタグラム(Instagram)の公式アカウントの投稿によると、フェルプスが受けているのは後者の方式のようだ。

 中国では、以前から年齢・性別を問わずカッピング療法が浸透していたが、フェルプスがこのあざのある体を披露して以来、その人気は急上昇している。北京(Beijing)のエステティックサロン経営者によると、五輪開幕後、カッピングを受けに訪れた客は3割増えたという。

 中国メディアは、カッピング療法が五輪選手にも利用されたことで、中国伝統文化の価値が証明されたと絶賛。国営新華社(Xinhua)通信と中国共産党の機関紙・人民日報(People's Daily)はともに、カッピングのソフトパワーがもたらす恩恵をほめちぎる記事を掲載した。

 しかし、カッピングに何らかの効能があることを示す決定的な証拠はほとんどない。過去に行われた複数の研究では、患者がカッピング治療により痛みが和らいだと語っているものの、プラシーボ(偽薬)効果による思い込みの可能性が排除できないため、実際に因果関係があるかどうかは分からないとの結論が出されている。

 これまでカッピングの臨床試験実施例は比較的少なく、中国以外の国々では主に代替医療を手掛ける施設で提供されるにとどまっている。(c)AFP