【8月10日 AFP】米ペンシルベニア(Pennsylvania)州ピッツバーグ(Pittsburgh)で6日、教会のバージンロードを笑顔で歩いた花嫁の横には、白髪の高齢男性の姿があった──10年前、花嫁の父親から心臓の臓器移植を受けている男性だ。

 小学校教師の花嫁ジェニ・ステピエン(Jeni Stepien)さん(33)は、10年前に事件に巻き込まれて殺害された父親の「ハート」には、自らの結婚式に必ず参列してもらいたいとずっと考えていた。そして、ステピエンさんの父親から心臓を提供された人物である、元大学教員のアーサー・トーマス(Arthur Thomas)さん(72)に、結婚式で「花嫁の父」役を務めてほしいとの旨を伝えた。

「人生で最良の日だった」と、式を終え、肩ひものないアイボリー(象牙色)のウエディングドレスに身を包んだステピエンさんは、教会の外で米ABCニュース(ABC News)のインタビューに答えた。ステピエンさんの両親もこの教会で結婚式を挙げているのだという。

 トーマスさんとステピエンさんが初めて会ったのは式の前日だった。

 AFPの取材に応じたトーマスさんは、「2か月ほど前にジェニさんから手紙をもらった。『私はあなたの心臓の持ち主の娘です。あなたと奥様のナンシーさんには、私の結婚式に参列していただきたい』と書いてありました。『一緒にバージンロードを歩いてもらえたらうれしい』とも」と述べ、「驚きましたよ。彼女が父親の心臓に結婚式に出てもらいたがっているのなら、これ以上のことはないと思った」と続けた。

 式のリハーサルで2人は抱擁を交わした。

「私たちはお互いをしっかりと抱き締めました。自分の手を(もう片方の)手首に当てると、脈が力強く打っていました。私の鼓動を感じたいかどうか聞いてみると、彼女は手を私の心臓の上に置いたんです」とトーマスさんはそのときの様子を語った。「とても心温まる、美しい瞬間でした」