■ギャングではなくチームのメンバーに

 スモーキー・マウンテンの居住者の多くは、政府や市民グループによる支援があるにもかかわらず、いまだごみ拾いの仕事で生計を立てている。

 野球やソフトボールは、7から18歳の子どもたちにとって、貴重な選択肢になったと、国際青年会議所(Junior Chamber International)マニラ支部の地域開発ディレクター、マービン・ナバロ(Marvin Navarro)氏は指摘する。そして、この選択肢は、子どもたちを麻薬やギャングなど悪い方向へ行かせない役目も果たしていると説明した。

 同プログラムは、スモーキー・マウンテンの住民を支援していた市民グループが、子どもたちが元ごみ捨て場で野球のまねごとをしていたのを見たのをきっかけに始まった。子どもたちは当時、ゴムのサンダルや段ボールで、急ごしらえのバットやグローブを作ってプレーしていた。

 当局は当該区画の無料での利用を許可し、フィリピンで事業を展開する米企業など民間企業のスポンサーらが球場の整備を手伝った。これらの企業は、衣服や備品の支給も行った。ナバロ氏によると、日本からも元プロ選手が少なくとも年に1回は訪れて、子どもたちのコーチをしてくれているという。