■「あの夜のことは忘れない」

 一方、トルコのレジェプ・タイップ・エルドアン(Recep Tayyip Erdogan)大統領がクーデター発生後、最初に発した国民向けメッセージを伝えたのはそのCNNトルコだった。TRTはその時、反乱兵らによる襲撃の渦中にあった。

 スマートフォンのビデオ通話を通じて番組に出演したエルドアン大統領は国民に対し、通りに出てクーデターの試みに抗議するよう呼び掛けた。

 その後、CNNトルコのスタジオも反乱兵らの襲撃を受けた。CNNの女性アンカー、バシャク・シェンギュル(Basak Sengul)さんは「彼らの声が聞こえた。彼らが建物に入ってきた。放送を止めるよう同僚に話しているのが聞こえる」と、プロとして冷静に状況を伝えた。

 番組は画面に何も映っていない状況がしばらく続き、その間、時折銃声や言い争いの声も聞こえた。

 ヒュリエトのセダト・エルギン(Sedat Ergin)編集主幹はその頃、「この段階ではわれわれの新聞は刷れない」と判断せざるを得なかった。「建物の壁には銃弾の痕が残っている。7月15日の夜を忘れないために、残したままにしておいた方がよさそうだ」と後に語っている。