3つの肺を持つ男―ブラジル史上初の金3個を目指すカヌーのホープ
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■スケジュール変更も味方に
この3年間、デュイスブルク(Duisburg)、モスクワ(Moscow)、ミラノ(Milan)で行われたカヌーのW杯で、ケイロスは3つの金メダルと3つの銅メダルを獲得してきた。また、リオ五輪のカヌー競技の日程が変更されたことも、ケイロスが自信を深める材料になっている。
リオ五輪のカヌー競技は、ロドリゴ・デ・フレイタス潟湖(Rodrigo de Freitas Lagoon)で8月15日から20日にかけて行われるが、これは通常よりもレース間隔をあけた日程となっている。ブラジル国内の報道では、これは母国のスターに有利になるようカヌー連盟が働きかけた結果で、開催国ならではの裏技といえるかもしれない。
ケイロスも、「C1の1000メートルとC2の1000メートルが2日続くのはすごく体にこたえます。だからスケジュール変更で、3つ勝てる可能性は広がりました」と認めている。3つ目のC1の200メートルについても、コーチとともに準備を進めており、「この距離にも適性があることがわかったんです。2015年のミラノのW杯では銅メダルを取れました」と話している。
五輪での栄冠を目指すケイロスにとって、2015年はいろいろなことがあった一年だった。ケイロスはこう話している。
「最高だったのは、エルロン・シウヴァ(Erlon Silva)と組んだC2の1000メートルと、C1の200メートルの両方で金メダルを取れたことです。あれでライバルたちを驚かせることができました。そのあとブラジルの2015年最優秀スポーツ選手にも選んでもらったし、そうやって、みんなに僕を知ってもらえたのはすごくうれしかったです」
「最悪だったのは、空港へ兄弟を拾いに行く途中で、車で事故を起こしたことですね。車がひっくり返ってしまって、だけど幸運なことにかすり傷ひとつ負いませんでした。練習にも復帰できて、今は五輪という目標に集中しています」
実は、主に金銭がらみの問題で、ブラジルのカヌーやカヤックの選手は連盟と対立しており、ケイロスは選手側の代表者も務めている。しかしこの夏、ケイロスが3つの肺を持つ男としてだけではなく、3つのメダルを持つ男として名を馳せるようになれば、そうした諸々のいやなことも、すべてどうでもよくなるに違いない。(c)AFP/Yann BERNAL