■英国勢の活躍が目立った大会

 全体として、今大会は英国勢のツールだった。ディメンション・データ(Dimension Data)のマーク・カヴェンディッシュ(Mark Cavendish、英国)は、ステージ4勝を挙げて通算勝利数を30に伸ばし、総合優勝5回、史上最多となるステージ34勝の記録を持つベルギーの伝説的選手エディ・メルクス(Eddy Merckx)氏に迫っている。

 そしてカヴェンディッシュにとって何よりも重要なことは、最強スプリンターの地位を奪い返すのに成功したことだろう。カヴェンディッシュはここ3年、エティックス・クイックステップ(Etixx-Quick Step)のマルセル・キッテル(Marcel Kittel、ドイツ)、この日の最終ステージを制したロット・ソウダル(Lotto Soudal)のアンドレ・グライペル(Andre Greipel)というドイツ勢2人の巨大な陰に隠れていた。

 今大会、英国勢は全体の3分の1にあたるステージ7勝を挙げている。カヴェンディッシュの4勝とフルームの2勝に加え、ディメンションデータのスティーブン・カミングス(Stephen Cummings、英国)が2年連続となるステージ1勝を記録した。

 英国のチームであるスカイは、2010年創設ながら、最近5年で総合優勝の選手を4度輩出している。そして2012年にスカイのブラッドリー・ウィギンス(Bradley Wiggins)が総合優勝を果たすまで、英国がツールを制したことは一度もなかった。

 大会の主役はフルームだったかもしれないが、ティンコフのペーター・サガン(Peter Sagan、スロバキア)もスポットライトを浴びた一人だった。世界王者のサガンは今大会でステージ3勝を挙げ、5年連続のマイヨ・ヴェール(グリーンジャージー)を獲得するとともに、大会中最も果敢な走りを見せた選手に贈られるスーパー敢闘賞も受賞している。

 4月のツール・デ・フランドル(Tour des Flandres 2016)を制し、ワンデークラシックの世界に初めて自身の「足跡」を残したサガンは、着実に力をつけており、クライマーではないものの、体重を落として三大ツール(グランツール)の総合優勝に専念することを選択すれば、ツール制覇も夢ではないかもしれない。

 山岳賞のマイヨ・ブラン・ア・ポワ・ルージュ(水玉ジャージー)は、ティンコフのラファル・マイカ(Rafal Majka、ポーランド)が獲得した。最近3年では2度目の獲得で、ライバルが純粋なクライマーではないロット・ソウダル(Lotto Soudal)のトーマス・デヘント(Thomas de Gendt、ベルギー)だったため、大差がついた。(c)AFP/Barnaby CHESTERMAN