【6月30日 AFP】イラク中部ファルージャ(Fallujah)に住むウム・イサーム(Umm Issam)さん(42)は、5歳の息子が空腹に耐えかねて殺してくれと彼女に頼んだ時、もしこの地から逃げることができれば2度と戻ってこないと誓った。

 イラク軍は6月26日、何か月にも渡った奪還作戦の結果、イスラム過激派組織「イスラム国(IS)」からファルージャを奪還したと宣言した。

 イラク政府は、戦闘による町の破壊は限定的だとして、避難した何万人もの住民が家に帰れるよう最大限の努力をすると誓った。

 2年以上続いたISによる支配と、何か月にも及んだイラク軍による包囲攻撃で住民は餓死寸前の状態に陥った。イサームさんはファルージャに戻っても絶対に幸せになれないと思ったという。

「息子は空腹に耐えられないから殺してくれと私に頼んできた。まだ5歳の子がそんなことを言うなんて」と、彼女は頭を振りながら語った。

 数か月前、彼女はファルージャの病院で流産した。近くの建物が空爆され、一帯がパニックに陥ったためだ。

「混乱状態で、とても怖かった。双子を妊娠していたが流産した。食べ物がなかったので病院へ行った」と、彼女は9人の子どものうちの1人を抱きながら語った。

 イサームさんは現在、ファルージャ南部のアムリヤット・ファルージャ(Amriyat al-Fallujah)の避難民キャンプに住んでいる。非政府組織(NGO)のノルウェー難民委員会(Norwegian Refugee Council)がキャンプを運営し、新しく避難してきた人たちに生活必需品を配布していた。

 ひとつのテントに入る1家族に与えられるのは、マットレス6枚に調理器具、キャンプ用ランプ、防水シート、水を入れる容器、ガムテープだ。

「ここは暑くてほこりっぽいし、水も食べ物も十分にないけど、生き延びることができる」と、イサームさんは言う。「(ファルージャには)戻りたくない。米軍、国際テロ組織アルカイダ(Al-Qaeda)、IS、飢餓……多くの苦難を経験した。次に何が起こるか分からないけど、あの町は呪われている。私は戻らない」

 彼女の夫は、一家がキャンプに到着した6月16日以来、身元調査のために拘束されている。

 ファルージャでの軍事作戦はほぼ終了したが、人道危機は最悪の状態に達しており、避難民の数は増え続けている。

 気温は45度を超えている上に、避難民のための生活必需品やテントさえ足りておらず、援助団体は迫り来る人道危機の深刻さに警鐘を鳴らしている。

 宗派対立も避難民の帰還の妨げになっている。「多くの男性が行方不明になった。ハシド・シャービ(Hashed al-Shaabi)に殺された近所の人も何人かいる」と、キャンプ地に逃げてきたがまだテントを与えられていないケフィエ・サレハ(Kefieh Saleh)さんは言う。

 ハシド・シャービとは、イランの支援を受けるシーア派(Shiite)民兵組織主体の準軍事組織のことで、ファルージャのスンニ派(Sunni)住民に報復しているとして非難されている。(c)AFP/Jean-Marc Mojon and Safa Majeed