【6月30日 AFP】インドの大部分が干ばつの被害を受け、モンスーンによる雨が待ち望まれている中、乾燥して気温も高い北部の、とある村は水であふれている。

 しかし、この農作地の豊富な水は重金属による汚染が懸念されており、世界第2位の人口を抱えるインドの課題が浮き彫りとなっている。

 河川や湖、地下水の汚染に加え、干ばつに見舞われている地域での慢性的な水不足もあり、インドの水に関する問題は深刻だ。

 北部ウッタルプラデシュ(Uttar Pradesh)州ギャングノーリ(Gangnauli)村の住人は、地下水が地元企業の廃棄物に汚染されているのではないかと疑っている。

 住人のディビヤ・ラティ(Divya Rathi)さんは、庭でバケツに張った水で遊ぶ娘を見ながら、「子ども達は腹痛や肌の問題を訴えていて、健康が心配だ」と話した。

 世界資源研究所(WRI)によると、インドではヒ素や硝酸塩など、少なくとも1種類の有害物質に地下水が汚染されている地域で暮らす住民は、1億3000万人以上に上るという。

 ナレンドラ・モディ(Narendra Modi)首相は、汚染が深刻なガンジス(Ganges)川の浄化に数10億ドルを投じると表明。下水や産業廃棄物の水路への流入を阻止するための取り組みも進められている。しかし、一部の地域では、長期にわたって地下水の管理が行き届いていなかったため、こうした取り組みも手遅れとの指摘もある。

■不足する飲料水

 インドの一部地域では、モンスーンによる降雨が待ち望まれている。だが、専門家によると、排水管理を改善しなければ、モンスーンの豪雨も問題の解決にはならないと指摘している。

「水の男」としてインドで知られる環境活動家のラジェンドラ・シン(Rajendra Singh)氏は、無計画な都市化が湿地帯や自然の貯水池を破壊してしまったため、雨が降っても水不足は解決しないと指摘。「単に洪水を起こすだけだろう」と話した。

 ギャングノーリ村では、地下水の汚染が確認されたため、当局は公共の手押しポンプに赤い線を塗って警告。多くの住人は代わりに自宅の庭に設置した井戸から水をくみ上げているが、この地下水も汚染されている恐れがある。

「水に毒が入っている」と、農業従事者のダランベール・シン(Dhramveer Singh)さん(50)。息子の重度の骨の奇形は、汚染された水が原因だと訴えた。

 村長のダルメンドラ・ラティ(Dharmendra Rathi)氏は、5000人の村民のうち最大半数が水道水の供給を受けているとした上で、状況は「以前より、かなり改善された」と説明。一方で、近隣地域の産業廃棄物が依然として河川に捨てられており、汚染問題は続いていると語った。(c)AFP/Trudy HARRIS