■プログラミングのジレンマ

 このような二者択一は「発生確率の低い事象」だが、プログラマーは「それでもやはり、そうした仮想的な状況でどう対処すべきかに関する意思決定基準を組み込んでおく必要がある」と論文は述べている。

 プログラミングによる意思決定では、交錯した、時に相反する一般大衆の意識を考慮に入れる必要がある。

 研究チームが実施した調査では、自動運転車が歩行者10人を死亡させるより、乗客1人を犠牲にする方を選ぶことが、より倫理的に正しいと答えた参加者が全体の76%を占めた。

 だが、救われる歩行者が1人だけの場合に乗客を犠牲にすることが好ましいと答えた参加者は23%にとどまった。また、より大きな善行のために家族の1人が犠牲になるかもしれない「意思決定」をする自動運転車を購入すると答えた人は、全体の19%にすぎなかった。

 調査参加者のこれらの反応は、明らかな矛盾を示している。「人々は、犠牲者の数を最小限に抑える無人自動車を誰もが所有している世界で暮らしたがっているが、自分が所有する自動車には、どんな犠牲を払ってでも自分たちを守ってほしいと考えている」とラーワン氏は説明する。

「だが、誰もがこのような考え方をすると、最終的には、どの車も自分の乗客や自分自身の安全を第一とするようになり、社会全体が摩耗した世界になるのは避けられない」

■規則か否か

 研究チームは解決策の一つとして、自動運転車が乗客1人または他者のどちらかの命を優先しなければならないケースに関する明確なガイドラインを定める規則を導入することを挙げているが、これが一般に受け入れられるかどうかは不明だ。

「無人自動車のプログラミングにおける公共の利益の問題を解決するために、規則を用いることを試みる場合、この種の車に対する人々の購入意欲が低下すると思われる」とラーワン氏は話す。

「これにより、事故の大半をなくすと考えられる最新技術の導入が滞ると思われる」(c)AFP/Rob Lever