【6月24日 AFP】あなたが乗車している自動運転車が選択を迫られたら、車内のあなたと、路上の歩行者の、どちらに死んでもらうことにするだろうか。

 ますます現実味を帯びてきた自動運転車の登場によって、交通事故の死亡者数は大幅に減少するが、同時に一筋縄では行かない倫理上のジレンマがもたらされる可能性が高いとする研究結果が23日、発表された。

 米科学誌サイエンス(Science)に掲載された研究論文によると、自動運転システムでは、技術面よりも倫理面を重視して決定を下すアルゴリズムの開発が、プログラマーにとって不可欠となるという。

 論文は「倫理的に行動する自律機械を構築する方法を見つけ出すことは、今日の人工知能で最も厄介な課題の一つだ」と指摘している。論文を発表したのは、仏トゥールーズ経済大学(Toulouse School of Economics)のジャンフランソワ・ボヌフォン(Jean-Francois Bonnefon)氏、米オレゴン大学(University of Oregon)のアジム・シャリフ(Azim Shariff)氏、米マサチューセッツ工科大学(MIT)のイヤッド・ラーワン(Iyad Rahwan)氏の3氏の研究チームだ。

「倫理観と個人の自己利益との間の折り合いをつけるアルゴリズムを設計するための近道は、当分見つかりそうにない。ましてや、どちらかを犠牲にしなければならない、命と命のトレードオフに関する倫理的意識がさまざまに異なる文化の違いを考慮するアルゴリズムなどはなおさらだ。だが、こうした議論が進むにつれて、世論や社会的圧力が変わってくることも十分あり得る」

 研究チームによると、自動運転車の導入によって、大気汚染の削減や、交通事故の最大90%をなくすことができるなどの社会的利益が提供されるという。

「それでも、衝突事故をすべて回避できるわけではない。なかには衝突の際に、不可避の被害を伴う場面で、自動運転車が倫理に基づき、困難な決定を下さなければならない場合もある」と、研究チームは論文に記している。

「例えば、自動運転車が、急ハンドルを切って通行人1人を犠牲にすることで、複数の歩行者を傷つけるのを回避するかもしれない。あるいは、1人または複数の歩行者を救うために、自身の乗客を犠牲にするという選択を迫られる可能性もある」