【6月20日AFP】オーストラリア初のコアラ専門病院の小さな検査室に、12歳になる雌のコアラ「シャーウッド・ロビン(Sherwood Robyn)」が連れて来られると、甘いにおいが室内に充満した。遠目には健康そうに見えたが、近くでよく見ると尻が湿っている。明らかにクラミジア感染の症状だ。

 オーストラリアを象徴する固有種のコアラは今、性感染症のクラミジアによって次々と命を落としている。

「シャーウッド通り(Sherwood Road)」で保護され、中世英国の伝説的英雄ロビン・フッド(Robin Hood)にちなんで名付けられたシャーウッド・ロビンの症状は、すでにかなり進行していた。コアラのクラミジアにはまだ治療法がないため、数か月以内に苦しんで死ぬ可能性が高いと獣医師は診断を下した。

 豪東海岸ポートマッコリー(Port Macquarie)に開設されたコアラ専門病院のチェーン・フラナガン(Cheyne Flanagan)臨床部長によれば、コアラのクラミジア感染は、人間による開発が生息地に及んだことで拡大・悪化してきた。「生息地が乱されることでコアラにかかる負担が、感染拡大に拍車をかけてきた。狭まった生息地で近接して暮らさなければならず、コアラ同士の接触が増えたためだ」。縄張り争いや餌の奪い合いも起きているという。

 シャーウッド・ロビンの病状に関する今後の見通しは、すでに生息地の消失、犬による襲撃、自動車事故、気候変動や病気などの影響で大打撃を受けている豪東海岸に生息するコアラの悲惨な未来を映し出している。

 1788年に英国人が入植する以前のオーストラリアには、1000万匹を超えるコアラが生息していたと考えられている。だが、樹上に暮らす個体数の正確な把握は難しいが、2012年に行われた全国調査による生息数は推計33万匹だった。