【6月13日 AFP】5年前にイスラム過激派グループに拉致され、今年3月に無事生還するまでサッカー英プレミアリーグのマンチェスター・ユナイテッド(Manchester United)の試合放送をラジオで聴くことで正気を保っていたと告白したパキスタンの30代男性に、同クラブがサイン入りユニホームを贈る粋な計らいを見せた。

 この男性は、パキスタンの冒涜(ぼうとく)法の改正を唱えて警護官に射殺された北部パンジャブ(Punjab)州のサルマン・タシール(Salman Taseer)知事(当時)の息子で、2011年に東部ラホール(Lahore)で武装グループに拉致されたシャバズ・タシール(Shahbaz Taseer)さん。本人の話によれば、拉致グループは「ウズベキスタン・イスラム運動(Islamic Movement of Uzbekistan)」で、その後アフガニスタンの旧支配勢力タリバン(Taliban)の監視下で監禁されていた。

 今年3月に解放され、5年ぶりに家族との再会を果たしたタシールさんは先月、パキスタン紙デーリー・タイムズ(Daily Times)への寄稿で監禁生活の恐怖を詳細に明かした。

 タシールさんによると、監禁中はむちで打たれたり、銃で撃たれたり、爪を引きはがされたりするなどの虐待を受けていたが、大好きなマンチェスター・ユナイテッドの試合をラジオで聴くことで精神の均衡を保つことができたという。ラジオは、同じくマンチェスター・ユナイテッドのファンだという監視役の戦闘員1人が、こっそり差し入れてくれたのだそうだ。

「それが私にとって唯一、外の世界につながる窓でした。サッカーのニュースを追うことで正気を保っていたんです」

 そう語っていたタシールさんは11日、マイクロブログのツイッター(Twitter)に「なんてこった! マンUからこれが贈られてきたよ!!!」とのコメントと共に、有名な赤いユニホームを着て満面の笑みを浮かべた自分の写真を投稿した。ユニホームは選手たちのサイン入りで、タシールさんは「もう仰天だよ!みんな、ありがとう!」と感謝の言葉も書き込んでいる。

 ユニホームの贈り物といえば今年初め、ポリ袋で作ったサッカー・アルゼンチン代表のリオネル・メッシ(Lionel Messi)選手のユニホームを着たアフガニスタンの少年(5)の画像がインターネット上で話題となり、メッシ選手本人からこの少年にサイン入り代表ユニホーム2着がプレゼントされている。(c)AFP