トランスジェンダー活動家の終わりなき闘い、マレーシア
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■暴力にも屈せず
トランスジェンダーとは、生まれたときの性別と自分が認識する性が違う人々のことを指す言葉だ。多くのトランスジェンダーは、虐待されても警察に通報することを恐れている。そうした被害者たちに対し、暴行されたり逮捕されたりした時にどこへ届け出ればいいかについて、アユブさんは助言している。
アンダーグラウンドのゲイ文化は活況を呈しているが、マレーシアで同性愛は違法とされている。同性愛行為は禁錮刑や体刑、罰金の対象になっている。
そのため、この国では多くの人が自分の性的指向を家族にも隠している。2015年のHRWの報告書は、そうした性的少数者に対する差別が「まん延している」と指摘した。
アユブさんは、性的少数者の中でもトランスジェンダーに対する差別が一番ひどいと言う。「ゲイやレズビアンは見た目では分からない。でもトランスジェンダーは見た目で分かるから」
在マレーシア米国大使館によると、米国務省は彼女の勇気と人権活動をたたえて賞を授けたという。
活動家たちは、アユブさんは異性の服装をすることを禁じるヌグリスンビラン(Negeri Sembilan)州の法律の撤廃を求める運動で大きな役割を果たしたと語った。
彼女の活動のかいあって、裁判所は3年の禁錮刑もあり得る同法について「下劣で抑圧的で非人道的」だとする画期的な判決を14年に下した。勝訴は後に、不可解な司法的問題により覆されたが、彼女の弁護士はその裁判を将来的な提訴への礎を築いたと評価した。
アユブさんは昨年、町中で何者かに襲われた。自分の活動が気に入らない人たちによる犯行だと、彼女は考えている。だが、脅しに屈することはなかった。
米首都ワシントン(Washington D.C. )でジョン・ケリー(John Kerry)米国務長官が彼女に賞を授与した数日後、マレーシアの首都クアラルンプール(Kuala Lumpur)の高級ホテルで開催されたトランスジェンダーのための資金集めパーティーが、イスラム主義者たちに襲撃された。
社会に受け入れてもらうための闘いは「簡単ではない」と、アユブさんは言う。「まだ長い時間がかかる」(c)AFP/Dan Martin