■白から黒へ

 どちらのケースにも進化論的なひねりが加えられている。

 ドクチョウ属のチョウは実際に、すべて毒を持っている。そこで生じる疑問は、なぜ仲間の種同士が特定の色を呈しているのかということだ。

 これについてナドー氏は、「ドクチョウ属が互いにまねし合うのは、みな同じ模様を持つことによって、捕食動物が何を避けるべきかを学びやすくなるからだ」と説明している。

 つまり、敵の識別能力を過大評価するなということなのだろう。

 英リバプール大学(University of Liverpool)のイリク・サッケーリ(Ilik Saccheri)氏率いるもう一方の研究チームは、オオシモフリエダシャクが白から黒に変わった年代の特定に成功した。

 サッケーリ氏は、取材に応じた電子メールで、統計モデルを用いると、この変異が1819年前後に起きたことが考えられるとした。そして「およそ80%の発生頻度に達するのに、約50年を要した」とも述べている。

 これは、科学者とアマチュア研究者の観察結果と一致する。科学者らは、これまでに、白からチャコールグレーへの体色変化が19世紀半ばに広範囲で起きたことを報告している。

 黒色のオオシモフリエダシャクは、1848年に英イングランド北部マンチェスター(Manchester)で目撃されたのが、記録に残る最初の目撃例とされている。(c)AFP/Marlowe HOOD