【3月11日 AFP】カメレオンが交尾相手の気を引いたり、ライバルを威嚇したり、捕食動物の目をくらませたりするために体色を変化させる様子は長年人々の興味をかき立ててきた。この妙技の驚くべきメカニズムを解明したとするスイス・ジュネーブ大学(University of Geneva)の研究論文が10日、英科学誌ネイチャー・コミュニケーションズ(Nature Communications)に掲載された。

 これまでカメレオンの体色変化は色素によるものと考えられていた。だが、ジュネーブ大チームによると、皮膚に含まれるナノ結晶を調整することで光の反射を変化させ体色を変えていることがわかったという。

■体色変化の秘密は虹色素胞に

 雄のカメレオンは体を目立つ色に変化させて交尾相手を引き付けたり、ライバルを威嚇して追い払ったりする。捕食動物から逃れるために体色をくすませることもある。

 例えば、今回の研究に用いられた成体のパンサーカメレオンは、皮膚の地の色を緑から黄色やオレンジに変化させ、青い斑点を白っぽい色に変えたり元の色に戻したりもする。

 体色を変化させる動物の大半は、色素胞(しきそほう)の一種である黒色素胞という細胞の中で色素メラニンが分散したり凝集したりして、体色の明るさが変わる。このため、色の純度は変えられても色調は変化しない。

 研究チームによれば、カメレオンの体色変化も長年このプロセスで説明できると考えられてきたが、この説は誤りだったことが判明。カメレオンの皮膚を分析した結果、色素細胞のすぐ下にある虹色素胞と呼ばれる細胞層で透明ナノ物質の光結晶が体色変化を調整していることがわかったという。

 虹色素胞は他の爬虫類やカエルなどの両生類にもみられ、他の脊椎動物にはあまりない緑や青といった体色を発現させている。カメレオンの場合は、虹色素胞内のナノ結晶格子を「調整」して光反射を変化させているという。

 論文によれば、平静時のカメレオンではナノ結晶格子が密集状態になり入射光から青の波長が反射される。これに対し、興奮時には格子が緩んで黄色や赤などの他の色が反射されるようになる。

 研究チームはこの現象を、興奮前と後のカメレオンの皮膚の生検結果に加え、光学顕微鏡法と高解像度動画撮影を用いて解明した。