【5月31日 AFP】タイ西部で30日、トラと触れ合えるとして人気の観光地となっていた寺院からトラを移送する作業を当局が再開した。この寺院には以前から中国伝統薬用としてトラを高額で売り飛ばしている疑いが持たれていた。

 問題となっているのは、カンチャナブリ(Kanchanaburi)の仏教寺院「タイガーテンプル(Wat Pha Luang Ta Bua)」。現地で取材したAFPカメラマンによると、同日午後、麻酔で眠らせて担架で運んだり、おりへ誘い込んだりしてトラの移送作業が行われた。当局はさらに数頭が近隣の保護施設へ移送される予定だと明らかにした。

 この寺院は観光客に入場料や撮影料の支払いを求めることは禁止されていたが、実際には料金を支払えばトラのそばで僧侶と一緒に写真を撮ることができ、観光名所となっていた。

 また動物愛護活動家らは、寺院が動物の闇取引に関与し、中国伝統薬用に売り飛ばして数万ドルを手にしていると非難していた。寺院側はこれを一貫して否定している。

 しかし昨年、寺院の獣医師の一人が、マイクロチップを入れていたトラ3頭が姿を消したとしてそのチップを当局に提供。3頭がどうなったのかは、いまだ明らかになっていない。

 トラの移送は僧侶らの妨害に遭ってここ数か月は進んでいなかった。今年1月初めの時点で寺院に少なくとも147頭のトラがいたと考えられている。1月と2月に計10頭が移送されたが、法廷での争いがもつれ移送作業は中断されていた。

 政府は僧侶と対立しているという印象を与えたくない上に、当局はこれほど多くのトラを収容できる場所がないとしていたため、何年も前から、政府にこの問題の解決する能力はないとみられていた。(c)AFP