【5月24日 AFP】オーストリアで22日に行われた大統領選の決選投票は、翌23日に行われた郵送票開票の結果、環境保護を推進するアレキサンダー・ファン・デア・ベレン(Alexander Van der Bellen)氏(72)が、極右候補のノルバート・ホーファー(Norbert Hofer)氏(45)に僅差で勝利した。欧州連合(EU)初の極右大統領の誕生には至らなかった形だが、欧州の主流派政党に激しい警鐘を鳴らす結果となった。

 無所属ながら緑の党(Greens)の支持を得たファン・デア・ベレン氏の得票率は50.3%。一方、反移民のポピュリズム政党・自由党(FPOe)の親しみやすく穏健な代表者というイメージを掲げたホーファー氏の得票率は49.7%だった。

 ホーファー氏は交流サイト(SNS)のフェイスブック(Facebook)上で敗北を認め、「もちろん悲しい」としながらも「どうかがっかりしないでほしい。この選挙戦での努力は無駄ではない、未来への投資だ」と述べた。

 ホーファー氏は、22日夜に出された決選投票の中間集計では4ポイント優勢だったが、23日に70万票という記録的な数に上った郵送票が開票されると、その紙一重の差は覆され、最終的にファン・デア・ベレン氏がわずか3万1000票余りリードして劇的な逆転勝利を収めた。投票率は、欧州の選挙としては高い約73%だった。

 識者らの多くは、先月24日に行われた第1回投票でホーファー氏に14ポイントの差をつけられたファン・デア・ベレン氏は、決選投票でも勝てないだろうと予想していた。

 これに対しホーファー氏は、欧州の移民危機に不安を抱える有権者の感情に訴え、主に教育レベルの低い労働階級男性や地方部からの支持を集めたが、選挙戦が進むにつれ、1945年以降政権を握ってきた中道政党に嫌気がさした有権者の支持を集めるため、自由党のメッセージをトーンダウンさせていた。

 ホーファー氏の戦略には、欧州各国における非主流派の政治家の成功や、米国の大統領選に立候補しているドナルド・トランプ(Donald Trump)氏の成功との共通点がみられる。(c)AFP/Nina Lamparski and Simon Sturdee