■ベルリン市は約3900人を雇用

 難民申請の審査には、数か月とはいわずとも、数週間はかかるケースが多い。その間、普通の就業は認められていないため、難民申請者らの多くは待ち時間にうんざりしている。この問題を回避しようと、当局が活用を決めたのが、この1ユーロジョブ制度だ。

 元は10年前、長期失業者の再就職を後押しする目的で発案されたもので、昨年110万人という記録的な数に上った難民の受け入れにつながればと活用されている。

 ベルリン市は現在、75か所のセンターで生活する3925人の難民を雇用している。今後はホームレス支援団体やアルコール依存症のリハビリ施設など、公共サービスを提供する機関での雇用にも適用を広げたい考えだ。

 一方、中部ハノーバー(Hanover)市では新たに同市に来た人々に対し、自転車の修理や寄付された服の仕分け、幼稚園児の送迎補助といった仕事と引き換えに、ドイツ語教室を受講できる制度を導入している。

 アンドレア・ナーレス(Andrea Nahles)労働社会相は、難民向けにこうした雇用10万件分を創出すると約束。こういった仕事が、労働市場に参入していくための「トランポリン」の役目を果たすと説明している。

 同国RWI経済研究所の経済学者、ロナルド・バッハマン(Ronald Bachmann)氏はAFPに対し「難民がこういう形でなければ働けないことに鑑みれば、短期的には理にかなっている」と述べた。記録的な数の難民が流入していることに伴い、反移民のポピュリズムが台頭する中、「彼らに仕事をさせれば、良い政治的シグナルにもなる」と述べている。

 とはいえバッハマン氏は、この1ユーロジョブ制度が本来の狙いである長期失業者の再就職支援で功を奏してきたとは言えない点を指摘し「こういう仕事から学べることはほとんどなく、労働市場へ戻る一助になることはごくごくまれだった」と述べている。(c)AFP/Yannick PASQUET