【5月18日 AFP】米国科学アカデミー( US National Academies of Science)は17日、遺伝子組み換え作物に関する大規模調査の結果を発表し、これらが危険な食べ物であることを示す証拠は見つからなかったと報告した。ただ、害虫や雑草の薬剤耐性獲得など深刻な問題はあるとしている。

 調査は、遺伝子組み換え作物に関する幅広い研究を対象に行われた。過去20年間の研究が対象とされ、その報告書では、規制機関に対し、新種植物の栽培や遺伝子操作の過程よりも、最終の生産物をより詳細に調べることを求めた。

  米ノースカロライナ州立大学(North Carolina State University)の遺伝子工学研究施設「Genetic Engineering and Society Center」の共同所長で同調査を主導したフレッド・グールド(Fred Gould)氏は、同問題をめぐる大量のデータと賛否両論によって「混乱状況」が生まれたことを指摘しており、新しい研究報告書については、データの公平な再考察の提示を目的としたとしている。

 50人以上の科学者が参加した今回の研究では、商品作物として代表的なトウモロコシ、大豆、綿における遺伝子組み換え特性に関する約900の研究論文などを考察した。

 報告書は、健康および環境に対する微妙な影響、もしくは長期の影響を見つけ出すことの困難さを認識しながら、「人体への危険性においては、現在市場に出回っている遺伝子組み換え作物と伝統的栽培による作物との間に、実質的な違いを示す証拠は見つからなかった」とし、また遺伝子組み換え作物に起因する環境問題を裏付ける証拠も見つけ出すことはできなかったと述べている。

 しかし、その一方で報告書は、害虫および雑草への耐性を含め、「現在の作物における遺伝子組み換え特性への耐性の発生が、大きな問題となっている」としながら、バイオテク作物の多くが耐性を持つように改変されている除草剤のグリホサートに対して、雑草も耐性を持つように進化していると説明した。

 報告書は、遺伝子組み換え作物とがんや糖尿病との間につながりは見つからなかったとしており、また「病気や慢性疾患と遺伝子組み換え食品の摂取」にも関連性はないとしている。

 遺伝子組み換え作物は、店頭で長持ちし、ビタミン含有率が高く、一般的な病気に対して耐性を持つとの理由から、1980年代から開発が進められてきた。

 だが、今回の研究によると、米国では、遺伝子組み換え大豆、綿、トウモロコシ収穫量の増加率に変化は見られなかったという。この事実は科学者の多くを困惑させた。遺伝子組み換え作物は農家の生産量を増加させるという長い間信じられてきた説と矛盾するためだ。(c)AFP/Kerry SHERIDAN