【5月10日 AFP】オーストリアのウェルナー・ファイマン(Werner Faymann)首相(56)が9日、辞任した。2週間余り前に行われた大統領選第1回投票で極右の自由党(FPOe)候補が首位になったことを受けて高まっていた圧力に屈する形になった。

 過去8年間首相を務めてきたファイマン氏は突然発表した声明の中で、自身が率いる社会民主党(SPOe)内でもはや「強力な後押し」がなくなったと説明。「十分な支援が得られていないことを受けて私は事態の責任を取り、本日をもって党首と首相を辞任する」と述べた。後任については明らかにされていない。

 中道左派の社民党と2008年以来の連立相手である中道右派の国民党(OeVP)が、第2次世界大戦(World War II)以後の同国の政治を支配してきたが、両党は近年、支持を失いつつある。

 2013年に行われた直近の総選挙では、両党で辛うじて議席の過半数を維持したが、世論調査によると2018年に予定されている次の選挙では過半数獲得に苦労するだろうという結果が出ている。

 欧州全体でみられる傾向と同様、国民の支持は政治の主流派から反主流派に移りつつあり、オーストリアでは特に自由党に流れている。同党は議論を巻き起こした故イエルク・ハイダー(Joerg Haider)氏が率いていた。

 オーストリアでは昨年、9万人が亡命申請し、一時はその約10倍の移民・難民が国内を通過した。自由党は、この問題をめぐる不安を背景に躍進した。

 首相就任時にはほぼ無名だったファイマン氏は移民問題が持ち上がった当初、ドイツのアンゲラ・メルケル(Angela Merkel)首相と同様に寛容姿勢を示していたが、ここ数か月間は強硬路線に切り替えていた。それでも、極右の台頭を阻止することはできなかった。(c)AFP/Simon STURDEE