■スーパーマーケットの台頭

 酪農産業団体「Dairy UK」によると、1980年には英国で購入された牛乳の89%が玄関先まで配達されていたが、1990年代には郊外型スーパーマーケット急増の影響で、30%に落ち込んだ。2015年はわずか2.8%。5000人の牛乳配達員が総計1億5400万リットルの牛乳を約250万軒の家庭に配達した。

 ガーナーさんは週6日、ロンドン北西のベッドタウン、セントオールバンズ(St Albans)で、200~250軒の家庭に牛乳を配達している。

 牛乳配達員は近くのワトフォード(Watford)の倉庫で20本の牛乳瓶が入った木箱を車に乗せ、午前2時ごろ、寒い中出発する。

 無駄な機能を省いた配達車は遅く、風雨にもろにさらされるが、フットワークの軽いガーナーさんは簡単に乗り降りできるこの車が気に入っている。「雪、凍結、洪水、22年間天気のせいで配達を休んだことはないよ」とガーナーさんは話す。

 順番の早い配達は真っ暗な中行うため、庭先の小道を歩くのに懐中電灯は欠かせない。 「一日の中で最もいい時間だ。 空気はさわやかで澄み切っていて、車もいない」

 田舎道を走ることもあれば郊外の大通り、コテージの並ぶ狭い道や団地内の通路を回ることもある。工業団地、学校、庭の小屋に配達することすらある。

 顧客の中には「今日は牛乳なし」、「いつもより1本多く」などのメモを残す人もいるが、ほとんどはインターネットを利用している。 「今後はこれが主流になる」とガーナーさん。「ネットが若い人を引き付けている」

 通常スーパーマーケットで50ペンス(約80円)の1パイントの牛乳が81ペンス(約130円)する。

「午後9時にインターネットで注文して数時間後に配達されるものは他にはないね」とガーナーさんは話す。

 牛乳は、フィリピンにあるコールセンターに電話して注文することもできる。