■災い転じて…

 ラニエリ監督の就任について、タイの著名なサッカー評論家はAFPの取材に応じると、「ホテルでの事件が、英雄を連れてきた」と表現し、「あの事件がレスターの名声を汚し、タイに多少の影響を与えたのは確かだ。しかし、この手のニュースが忘れ去られるのもタイの風潮だ」とコメントした。

 レスターのオーナーがセックススキャンダルについて沈黙を守る一方で、乱交事件に関与した女性らを起訴する構えをみせていたバンコクの司法当局も、今では事件の記録は何も残っていないと話している。

 タイは夜の歓楽街で有名な国であるものの、保守的な考え方が主流で、セックスは依然として禁忌の話題とされている。

 バンコクでAFPの取材に応じたアイヤワット氏は、優勝ツアーとして今年もタイに行くのか聞かれると、「ノー」と答えた。

 温厚なラニエリ監督は、冷静で優しい顔をみせると同時に、すぐさまトップクラブで培った豊富な経験を発揮。チームの好調を維持し、賢明な戦力補強で士気を高め、起こり得ないはずのタイトル獲得に着手した。

 今季の開幕時点では降格候補に挙げられ、プレミアでの優勝オッズが5000倍とされていたフォクシーズ(Foxes、レスターの愛称)を率いることになったラニエリ監督は、最初の仕事の一つとして、ストライカーのジェイミー・バーディー(Jamie Vardy)に厳格な処分を下した。バーディーは、あるカジノでアジア人の男性を「ジャップ(日本人に対する蔑称)」とののしり、その姿がカメラにとらえられていた。

 ラニエリ監督に「過ち」を許されたバーディーは、今季22得点の活躍で、チームのタイトル獲得に貢献した。(c)AFP/Aidan JONES